59.喜劇悲奇劇(泡坂妻夫/東京創元社)
総評:★★★★☆
オススメ:言葉遊びに溢れた正統派ミステリを読みたい時に是非。
あらすじ(引用)
上から読んでも下から読んでも「きげきひきげき」-題名に始まり、章見出しや登場人物は回文ずくめ、言葉遊びが随所に鏤められた本書。加えて主人公はマジシャン、紛うかたなき本格ミステリとくれば、斯界の魔術師泡坂妻夫のまさに真骨頂です。動く娯楽場“ウコン号”で起こる事件を、知的遊戯に長けた粋人は如何に描いたでしょう。余人をもっては代え難い話芸をご覧じませ。
個人的に、泡坂妻夫は思い出したようにぽちぽちと読んでいて、そのどれもが氏の奇術的要素に富んだ遊び心たっぷりの作品だなと思う。
本作は、しばらく前に「七つの海を照らす星」を読んで作中の一つに回文をテーマにした作品があったので、「そういや泡坂妻夫も回文だらけの作品書いてたな」と思って選んだもの。
参考リンク:七つの海を照らす星(七河迦南/東京創元社) - 好きなものだけ食べて生きる
うーん、いや、比較しちゃいかんのですが、さすが泡坂妻夫、正直七つの海よりこっちのが好きです。だいぶ古い作品なんだけど、時代を感じさせないあたり文章上手いんだよなぁ…回文というテーマ一本だけで長編一作かけちゃうのもお見事。
個人的な印象としては、リラ荘殺人事件に近いタイプの、先が読めない展開&スッキリ綺麗なトリックという感じのミステリ。
特に文句もなくトリックも腑に落ちた感じなので、ネタバレ感想はなし。なんていうか、泡坂妻夫作品ってあっさりしてて引っかかりも少ないんだよな…
因みに、新保博久の解説が実に実に実に!素晴らしい出来なので、ぜひ文庫版でお買い上げいただいてご一読いただきたいところ。電子書籍版でも読めるよ。