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日々雑感(ミステリ感想中心)

孤島パズル(有栖川有栖/東京創元社)

60.孤島パズル(有栖川有栖東京創元社

総評:★★★★★

オススメ:改めて勧めるまでもなく...「孤島」「密室」「読者への挑戦状」、新本格のお手本のような一冊。

 あらすじ(感想)

紅一点会員のマリアが提供した“余りに推理研的な”夏休みー旅費稼ぎのバイトに憂き身をやつし、江神部長以下三名、宝捜しパズルに挑むべく赴いた南海の孤島。バカンスに集う男女、わけありの三年前、連絡船の再来は五日後。第一夜は平穏裏に更けるが、折しも嵐の第二夜、漠とした不安感は唐突に痛ましい現実へと形を変える。晨星落々、青空に陽光が戻っても心は晴れない…。

 

 

いやあ面白かった......悔しい...

 

恥ずかしながら有栖川有栖をまともに読んだのはこの作品が初めて。しかも、読み終わってからこの作品がデビュー後二作品めと知ったほどの体たらくである...。

 

いや、弁解させてほしい。

まず何度か言及している通り、自分は探偵・助手が固定のシリーズものはあまり手をつける気がなくて、よっぽどがない限り(※)読むまいと思っていた。

※メルシリーズと石動シリーズは「よっぽど」というやつです(冊数も少ないしね)

それと、(今までの感想記録を見れば明らかなのだが)叙述トリックがめちゃくちゃ好きで、物理トリックとかパズラー的なものは正直しちめんどくさいし、なかなか手に取ろうと思ってこなかった。

ミステリ読みとして「あまりに好き嫌いしすぎではなかろうか」(その辺はブログタイトルを見てもらうとして)というこの2つの理由によって、アリスシリーズはもちろん、島荘御大の御手洗シリーズ、法月綸太郎シリーズもほぼ読んでないんだけども(ええ…)。

 

だがしかし。

斜め屋敷もキングを探せもどちゃくそ面白かったんだよね.........やっぱ名作には名作の理由があるんすわ……

 

それでまぁ、アリスもちょっとくらいはかじってみるかと思って、恐々手に取ったのがこの一冊だったという。

 

前置きがやたら長くなったけども、そのくらい期待と不安の入り混じった一冊だったんだよね。

いや、でも、さすが御大。

激烈スーパーハチャメチャ面白かったです。好き嫌いもほどほどにしろや自分!!!!

 

まず文章が上手い。読みやすい。情景描写も会話も嫌味がなくてすぐに映像が浮かぶし、大学生のモラトリアム感というか、楽しげで気だるい感じが鮮やか。

それでいてがっつり人が死ぬ。ここ重要。

しかもミステリ者垂涎の「孤島」「宝探し」「密室」「読者への挑戦状」とくれば、嫌が応にもテンションあがりまくり。

 

今まさに読みたかった「ミステリらしいミステリ」だったので、ページを繰る手が止まらず一気に読んでしまった。うーん良かったなぁ。

せっかくなのでもう一作くらいアリスシリーズ読もうかな。(後日月光ゲーム読みました。最高か????!!!ていうかこれがデビュー作??????!はぁ………なぜ今まで読まなかったのか……)

 

 

孤島パズル 江神シリーズ (創元推理文庫)
 

 

 

※以下ネタバレあり感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

といってもそんなに書くことないけども。

これでマリアが犯人だったら驚くよな〜と思いながら読んでたので、礼子が犯人だったのはまぁ、マトモだな!と思ったくらい。

にしても、舟に乗ってるのを目撃されなかったらこれ絞れなかったことになるのかな?犯人がすぐ自供しちゃったから難だけど、証拠が乏しいような。

密室になってしまった理由とかもなかなか意表を突いてて面白かった。

 

ラストでマリアが休学になってしまったのも、一抹のほろ苦さを感じさせて味わい深い。

自分はミステリで人が書けてなくてもあまり気にしない勢なんだけど、本作は各人の関係性や性格がうまーく描かれててよかったなぁ。

 

 

しかし、正統派ミステリだと、面白くてもあんまり書くことないな。笑  素直に傑作だったと思います。青春ミステリだったなぁ。