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日々雑感(ミステリ感想中心)

ボトルネック(米澤穂信/新潮社)

86.ボトルネック米澤穂信/新潮社)

評価:★★★☆☆

オススメ:ビターな青春ミステリを読みたい方へ。

 

あらすじ(引用)

亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した…はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。

 

米澤穂信はもっと若い時、例えば高校生くらいで読んでおくべきだったのかもなぁと思う。

儚い羊たちの祝宴でも思ったのだけど、こういう小説を読んで、主人公の悲痛な叫びを受け止め、その結末に苦悩するような、繊細な感受性が今の自分にはもうないのかもしれない。

 

あとは普通に、米澤穂信の作品が合わないだけって可能性もあるけども。苦笑

 

くどくど言い訳を書いたけど、結論として本作「ボトルネック」は個人的に合わない作品だった。

ていうかミステリなんかね、これ。うーん。

人物像にあんまりリアリティがなくて、推理も論理的というよりは想像が先走ってる感じが強くて説得的でないというか。意外な犯人でもないしねぇ(すぐさま謎を解いてしまうので、あの事件については本作の重要部分ではないんだろうけど)

構成は面白いと思うんだけど、ビターなオチと言ってもあんまり捻りがなかった感じが……同じ青春ミステリでほろ苦い結末を迎える作品なら、「教室が、一人になるまで」か「あいにくの雨で」の方がオススメだなぁ。

でも好きな人は好きかも。うーん、私が高校生で、もっとこの手の作品を読む前に出会ってたら衝撃が違ったかもしれない。

 

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※以下ネタバレあり感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ボトルネック」は主人公そのものでした」というのは、もう最初の「両親の不仲はリョウとサキの違い」のあたりから完全に分かっていたわけで、「リョウさえいなければ」が繰り返し繰り返し描かれるのが正直単調かなと。

ノゾミを殺したのがフミカだという真相も、正直「他に容疑者いないし、むしろよくその証言で警察にバレなかったな...」としか思えなくて。海風陸風なんて現場検証中に真っ先にわかるのでは???まぁここはメインテーマじゃないんだろうけど。

 

てかこれ、冒頭でも書いたけどミステリみ薄くない?びっくりするようなどんでん返しがあんまりないし、オチも予想の範囲内だし。

 

というか米澤穂信、「インシテミル」と「儚い羊たちの祝宴」とこれしか読んでないけど、毎回すんごい漫画チックというか、そんな奴いねぇよ!なキャラが出て来て現実味ないんだよなぁ。今回でいうと、ノゾミとフミカ。いるか?こんなやつ。いてもいいけど、もうちょいリアルさがほしい。

いや、ミステリのキャラなんて荒唐無稽で全然いいんだけど、この作品って主人公の痛切な叫びとかそういう繊細なものが描きたいわけだろうから、やっぱそれにまつわる人があまりに非現実的だと醒めない???

インシテミルは、完全に娯楽極振りミステリだったんで、須和名みたいな人工的なキャラがいても気にならなかったんだけども。

 

最後の一行、

『リョウヘ。恥をかかせるだけなら、二度と帰ってこなくて構いません』

はひたすら報われないというか、最後の最後まで容赦ない主人公の追い詰め方で、イヤミスとしては秀逸なオチだなぁとは思うんだけど。思うんだけど.........

死ぬことが一番の絶望、みたいな終わり方ってやっぱりちょっと薄っぺらいのかなぁというか、あまりにも予想通りすぎて、物足りないというか。いや、贅沢なんだけどね。

 

例えば、「教室が、一人になるまで」は、最後「そんな悲しい終わり方ある?!」という悲劇的なエピローグなんだけど、でも、ほんのちょっとだけ希望を残す終わり方で、作者の人間の見方が垣間見えるんだよね。そこに作者のこだわりを感じるし、すごく考えられていて、工夫を凝らして書き上げた終わり方だなって思う。

「教室が、一人になるまで」の感想で詳しく書いたけど、ミステリとして好きな一冊ではないけど、あの落とし方がすごく好きで小説としては出来のいい作品だと思うんだよね。

逆に(?)「あいにくの雨で」は、かなり徹底的に救いようがない。でも、単純に主人公が自殺するとかそういう終わり方じゃない。なんというか、ミステリ的などんでん返しをうまく使いながら、「信じていた世界がひっくり返るような絶望感と無力さ」で終わるので、麻耶雄嵩の性格の悪さがバチバチに出てて、これもこれで大好き。

 

なんだろうね、儚い羊たち〜もボトルネックも、もう一押し欲しい感があって。秀作なんだけど、傑作とはちょっと言い難い何か、違いがあるんだよね......

でもボトルネック、すごい評価されてる作品だし、私の読み方があんまり良くないのかもしれん。うーん。この辺は好き好きあるかも。

よねぽ作品はあと「満願」くらいは履修して、それでもあんまりハマらなかったら単に好みじゃないのかもと思うことにします。

 

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