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日々雑感(ミステリ感想中心)

名探偵のはらわた(白井智之/新潮社)

93.名探偵のはらわた(白井智之/新潮社)

総評:★★★☆☆
オススメ:少年漫画系の特殊設定ミステリを読みたい方へ。あらすじを読んでいけそうならどうぞ。グロ度は低めで、読みやすい白井作品です。

 

あらすじ(引用)

稀代の毒殺魔も、三十人殺しも。日本犯罪史に残る最凶殺人鬼たちが、また殺戳を繰り返し始めたらー。新たな悲劇を止められるのはそう、名探偵だけ!善悪を超越した推理の力を武器に鬼の正体を暴き、そして、滅ぼせ!

 

やってしまった…読み終わってすぐに感想を書いておいたのに、ついさっき間違えて全削除しました。毎回1時間くらいかけて書いてるので、これはきつい。何書いたか全く覚えてないので、今泣きそうですが改めて感想書こうと思います......

 

正直、いけにえと比べると若干not for me感があって、もし先にこっちを読んでいたらいけにえは手に取らなかったかもしれない。

オススメのところに書いた通り、あらすじからしてもう特殊設定ミステリ感バリバリなので好きな人は好きだと思うし、畳み方も綺麗なんだけど、ちょっと都合の良すぎる展開がなきにしもあらずという点が、うーん。いや、ミステリなんて大体がご都合主義のオンパレードなんだけど、それを感じさせない物語運びにするのが作者の腕の見せ所だと思うんですよね。

 

でも、実際にあった事件をベースとして、その犯人が現代に蘇って殺人を犯すという設定は面白い。しかも探偵側にあんまり倫理観がないので、ばんばん犯人を殺しまくるし犯罪も犯す。

おすすめのところにも書いたけど、ちょっと少年漫画的な作品だと思う。バトルもあるし、敵はキャラが立ってるし、会話もコミカルでたまにほろりとさせるところもある。

あとB級映画的面白さがあるので、映像化したらヒットしそうな気がする。R18G必須だけど。笑 読み味も作品の目指しているだろう方向性も、いろいろな意味でいけにえとは方向性が全然違った。

 

これを先に読まないといけにえが理解できないとかでもないし、個人的な評価としては図書館で借りるか文庫落ちを待っても良い気がします。

 

zakkan0714.hatenablog.com

 

 

 

 

※以下ネタバレあり感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浦野灸の探偵ぶりがめちゃくちゃ好きだったので、物語の中盤で退場してしまったのが本当に残念だった。古城倫道が乗り移る形で生き返りはするのだが、これがまたいつもの「白井節」全開の残念おじさんで、元の浦野灸がどんどん惜しくなるという...いや、計算づくのキャラ設定だなこれは。

しかしこれは浦野灸や古城倫道の物語ではなく、はらわたの物語である。

はらわた君が一話でダメダメな推理を披露したところから徐々に成長していく様は、読んでいて少年漫画にも似たカタルシスがある。あらすじからは想像できなかったのだが、白井作品には珍しく(いや、評価するほどたくさん読んでいるわけではないのだけど)爽やかな読後感のある一冊だった。

 

ただまぁ、正直、本格ミステリとしては不満が残る。

特殊設定モノとしてはありがちではあるものの、後出しの特殊要素で犯人を絞り込んだりトリックに利用したりが多くて、「そんなことまで考慮して推理するんじゃ何でもありなのでは」感がちょっと多い。

そもそも第一話の動機からして「人鬼を蘇らせたかった」だし、農薬コーラも実は青銀堂事件の方の犯人だったというオチだし(だから何なんだ感が若干ある)。あと人鬼は乗り移る対象を次から次に変えられるというのがトリックに使われるんだけど、いやその設定使ったらミステリ成り立たなくないか?

 

それと、結局最初に提示された7つの実在の事件全部を取り上げるわけではないんだよね...どれがどの事件の犯人なのか混線させてるから仕方ないんだけど、予想してた程のボリュームが無かったのも残念。

 

なお、いけにえとのつながりについてはあえて言及しないが、あのちょっとしたサプライズを楽しむためだけにはらわたを先に読ませるかと言うと.....個人的にはそこまでしなくてもいいかな。いいから全人類黙っていけにえを読んでくれ。笑(はらわた感想文のはずなのにいけにえステマになってしまいました)