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日々雑感(ミステリ感想中心)

グランドマンション(折原一/光文社)

91.グランドマンション(折原一/光文社)

総評:★★★☆☆

オススメ:ドンデン返しを楽しみたいあなたへ。

 

あらすじ(引用)

「グランドマンション一番館」には、元「名ばかり管理職」の男、元公務員、三世代同居の女所帯から独居老人、謎の若者、はてはかなり変わった管理人までと、アクの強い人たちが住んでいる。騒音問題、ストーカー、詐欺、空き巣ー次々に住人が引き起こすトラブル。そして、最後に待ち受けていた大どんでん返しとは…。希代の名手が贈る必読の傑作ミステリー連作集。

言わずもがな、叙述の名手・折原一の連作短編集。

叙述大好きの自分だが、折原一は倒錯の死角、倒錯のロンドと2冊しか読んだことはなかった。「超絶技巧の凝った叙述を読むのは頭が疲れる」&「叙述のためのミステリといった風情になってしまい不自然さが抜けない」という2点からそんなに好きな作風ではなかったので。

ただ、本作は評判も上々だったうえ、何しろ短編集なので読みやすそうということで、久々に手に取ってみた。

 

結論から言うと、かなり良かった。これまで読んだ折原一の中だと一番一般向けに紹介したい感じ。読みやすいし。

 

ただネタの精度はピンキリですね。正直酷いトリックもある。叙述トリックの勉強にはちょうど良いのかも。個人的に好きなのは第3話「善意の第三者」。

 

zakkan0714.hatenablog.com

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※以下ネタバレあり感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


折原一作品は叙述の鉄板である、

①話者の誤認(性別誤認、年齢誤認、赤の他人)

②時間の誤認

③場所の誤認

あたりを疑ってかかれば大体当たるのだが、ただあまりに可能性が広がりすぎて結局推理できないこともしばしば。

本作にも探偵とか出てこないんだけど、読者を引っ掛けるだけのトリックだから作中人物にとっては大した謎じゃないことが多いんよね。

しかも超絶技巧トリックのために、登場人物の行動がだいぶご都合主義になりがち。そんな行動原理のやつ、いる???みたいな。

 

とはいえ、一つのマンションを舞台によくもまぁ手を替え品を替え、8つもトリックを作ったなぁという感じ。

 

第一話 音の正体

「9」にあたる記述だけが話者が異なるという叙述トリック。沢村も自宅で妻を殺害していたというオチで、砂を運び込む描写が伏線。
9だけ視点人物が違うのはなんとなく気付いたが、ストレートに面白くて良き。一話目としてちょうどよい。

 

第二話 304号室の女

麻子、大介夫婦は304号室ではなくモデルルームに住んでおり、松島の隣室である304号室に本当に住んでいたのは上司である大田原だった。場所の誤認による叙述トリック
松島がうざいが、モデルルームに勝手に住み着くDQN夫婦という真相は普通に感心した。面白い。

 

第三話 善意の第三者

祖母ミヨと娘綾香の死を隠す久保田千恵と、母筆子を殺した英司、とミスリードさせるが、実際にはミヨは徘徊したままいなくなってしまったのであり、筆子を久保田家で代わりに預かって失踪を隠していた。

(「11」の「ドアの外の人物」は高田筆子)

また、英司が久保田家に侵入したのは綾香の縁談がフイになってから30年後。

人物誤認と時間経過の叙述トリックコンボ。

大分「叙述トリックのための設定」感が強い一作ではあるが、「即身仏」になってしまった綾香の責任を取ると言って結婚するオチに妙に感動してしまった。じとっとした結末が多い折原作品の中では、珍しく爽やかな雰囲気がある。

 

第四話 時の穴

これ一番ひどい。

密室モノだが、盗みに入ろうとした瀬沼を殴殺した佐久間が、抜け穴から戻ってきたところで心臓発作でそのまま死んでしまったというオチで、肝心の密室は、地震の影響で自然と抜け穴が塞がったというもの。

偶然性に頼りすぎィ!!!あんまり叙述らしい叙述もないね。

 

第五話 懐かしい声

横行するオレオレ詐欺の犯人は、被害者に見せかけた塚本ハルで、若者集団「世直し隊」は詐欺犯人を捕まえようとしていただけ。

これも第三話と同じく、ハッピーエンドなので結構好き。オレオレ詐欺犯人=若者、という先入観を逆手に取っている。

 

第六話 心の旅路

やたら入り組んだ人物誤認の叙述トリック

「留子」は37歳で、「母をたずねて三千里」を書いたのも留子。1の最後に拾った日記は留子父が落としたもの。日記の中の「武藤さん」は留子を養子縁組してくれた人。

これもなんというか、トリックが先にあって、描写が色々不自然なのが腑に落ちない...

 

第七話 リセット

マンションが消失したと見せかけて、実は全員2号館に移っていたというオチ。また、留子の部屋に侵入したのは高畑のように見せかけて、旧管理人だった。場所の誤認と人物の誤認。

一番すぐタネは分かったけど、最後に旧管理人持ってくるのは連作短編集としてよく出来てた。毎日記憶がリセットされる健忘症とかどんだけミステリに都合のいい設定やねんとは思ったけど笑

 

エピローグ

旧管理人を裏で操ってたのは松島だったというオチ。蛇足では???一人称三人称混ざってて読みにくいし。

 


好き嫌いは分かれるかもしれないが、まぁ初折原としてもちょうどいい感じの一作ではないか。