99．エレファントヘッド（白井智之／KADOKAWA）
総評：★★★★★
オススメ：エログロタブーなんでもありかつ玄人向け。それさえクリアできれば、脳を焼くような最高の読書体験が待っているでしょう。
あらすじ（引用）
精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことをー。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。
本ミス二年連続二連覇おめでとうございます。
白井智之やっぱ天才だわ...（みんな知ってる）
私にとっての神ミステリ作家は、麻耶雄嵩と殊能将之が二大トップだったんだけど、ここ最近の白井智之も同じくらい好きかも。前述の二人みたいなアンチミステリとかではないけど、「どういう脳みそしてたらこんな話思いつくの？！」って作品ばっかりでもう。最高。
本作はとにかく、エンタメに富んだ展開&伏線に次ぐ伏線で読者を楽しませようという心意気が大好き。サービス精神がありすぎる。ページ繰る手が止まらなかったよ。
オススメのところで若干書いちゃったんだけど、いつもの白井智之なんで、めちゃめちゃにエログロがすごいのは覚悟して読んだほうがいい。「名探偵のいけにえ」で増えたであろうライトファンが一気に離れていく音が聞こえる...
白井智之初めて読むよーって人は絶対に「名探偵のいけにえ」から始めた方がいいと思います。比較的グロ少な目だし最高に面白いし。
別にグロ作品が好きなわけではないので、単純に気持ち悪いだけならここまで高評価では勧めないんだけど（実際過度なエログロを露悪だけで終わらせている作品は山のようにある）、白井智之作品はそれらがちゃんと話に関わってきてるから面白い。特殊設定のミステリ作家として最高峰にいる。
まぁただ、いけにえに比べると設定が凝りすぎてて、個人的には、途中から推理する気がなくなってしまったし、オチについては人によってはあんまり納得できないかもしれない。
面白かったんだけど、技巧が凝らされまくっていて一つ一つ言及するのは大変なので、今回のネタバレ感想は比較的短めです。読んでくれとしか言いようがないし、こんな凄まじい作品をネタバレサイトですまそうなんて奴は地獄に落ちるべき。
ハードカバーの本は文庫落ちするまで待つ派なんだけど、白井智之と夕木春央は待ちきれなくて買うようになってしまった。完敗。
※以下ネタバレあり感想
いやもうなんていうか、展開が目まぐるしすぎて！！
・プロローグからいきなり挨拶がわりの叙述トリックでジャブ。からの彩夏爆発。なんてとんでもないミステリなんだと興奮した覚えがある。
（読み返して思ったけど、ここで話についていけないガチのミステリ初心者をふるいにかけてるのかもしれない）
・序盤の象山だけど、白井作品のキャラらしからぬ優しそうでクレバーで人生の成功を謳歌してるような設定にめちゃめちゃ違和感あって、「いやもう絶対転落待ってるやつじゃん〜www」とは思ってたけど想像以上の激ヤバ男で、もうね。大興奮した。期待を裏切らない白井智之。
和泉殺したところまではともかく、ぺぺ子のシーンが本当に気持ち悪くて、なんでこんな発想できんの？？（n回目）ってなって、さすがにいったん休憩入れちゃったよね。
・そっからのシスマによる象山分裂。ここから加速度的に話がややこしくなる。いや本当に発想力...
象山ズによる推理合戦のところも、「名探偵のいけにえ」を彷彿とさせてわくわくした。言うまでもないけど、特殊設定の名手だけあってルール作りがめっちゃ上手い。掌でコロコロされてるのが気持ちよかった。
・裏島、もぐら男の伏線回収まーーーじで痺れた。そうだよ、白井智之がいらん描写入れるわけないじゃん！！
まぁただ、最後の胎児爆発については、おそらくこのトリックを思いついてから並行世界の設定を詰めていったのかなという感があって、若干、設定がトリックに都合良すぎでは？みたいなところはあったかな（特に生田周りの設定）。
でも大オチの、船に取り残される象山のエピローグは良かったな。
ハッピーエンドより絶望で終わるミステリ大好きなんだよね。
特に象山は全く同情に値しないキャラとして描かれているので、自業自得感もあり、あんまりイヤミスにもなっていない笑
やーそれにしても面白かったなぁ。二連続で怪作を出されると次の新作ハードルあがっちゃうな。きっと白井智之先生なら余裕で超えてきてくれるだろう期待もありますが。
あと個人的に、複数の象山が話し合ってるシーンや鏡で過去の記憶を写すシーン、実写になったらすごく映えそう！って思ったんだけど、絶対絶対倫理的に無理だわ笑 R18でもだいぶ厳しい...
