好きなものだけ食べて生きる

日々雑感(ミステリ感想中心)

ある閉ざされた雪の山荘で (東野圭吾/講談社文庫)

29.ある閉ざされた雪の山荘で (東野圭吾講談社文庫)

総評:★★★★☆

オススメ:定番のクローズドサークルもので騙されたい方へ。

 

あらすじ(引用)

1度限りの大トリック! 

たった1度の大トリック!劇中の殺人は真実か? 

俳優志願の男女7人、殺人劇の恐怖の結末。 

 

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか?驚愕の終幕が読者を待っている!

 

東野圭吾の隠れた名作と名高い本作。クローズドサークルものはやっぱりミステリ読みの心をくすぐるよね。ということで満を辞して選んだ。...のだが。

...期待が大きすぎたかな、というのが読後の第一印象。

優等生だしすっきりまとめてはいるものの、大きなインパクトに欠ける感じ。理由ははっきりしていて、ネタバレに抵触するのでここでは書かないが、オチがちょっと肩透かしだったように思う。うーん。

演劇に見立てて始まった「殺人事件」の合宿という特殊な状況設定はとてもユニークで、その辺は高く評価したい。また、読みやすい文章の上展開もスピーディなのでミステリ初心者にもおすすめできるのだが、初っ端に『そして誰もいなくなった』のややネタバレ的な言及があるのでちょっと注意。これだからミステリは古典は先に読むことを推奨されるんだよね...

 

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

 

 

 

※  以下、ネタバレ感想

 

 

 

 

 

 

叙述トリックって聞いてたんだけどこれ叙述なのか??

三人称視点(読者視点)が実は麻美視点であり、殺人事件を「演じる」ことで復讐を成し遂げたようと麻美に思い込ませることが目的だった、というのは真似ようったって真似られない面白い設定だが、うーん......

被害者も犯人も全部「予定通りのシナリオを演じていた」ので、トリックらしいトリックはないんだよね。設定一本で書き上げた話。なおかつ、設定として当初は「あくまでお芝居」という認識だったためクローズドサークル特有の緊迫感やサスペンスみが弱かった。しょうがないけど。

 

個人的には、「お芝居と思わせて殺人を行う理由は何か?」→「死体がなくても死んだと思い込ませることができる(実際は死んでいない)」までは第二夜までで思いついていた。

ただ、自分は「由梨江が実は生きていて犯人」だと思っていたので見当違いではあったんだけど。

もうちょい読み進めていくと、明らかに本田が怪しい行動をとるので「うーん??」とはなった。あまりに怪しいので「逆に本田は久我をハメようとしている真の探偵で、犯人は久我なのか...??」まで考えた。叙述モノだってことにこだわりすぎたんだと思う。裏の裏をすぐ考えてしまうのは悪い癖。

だが、由梨江や久我が犯人なのではと疑うぐらいの「ドンデン返し」を期待していたので、本田が犯人でしかも実はお芝居だからみんな共犯者、みたいなオチはちょっと期待はずれ。死んでないんかいっていう。

冒頭でも言ったけど、「死んだと思わせて全員生きてた」オチは相当上手くやらないとふざけんなって気持ちになる。私は人が死ぬ話が読みたいんだよ!(語弊)

あと、久我のキャラがラストまでよく分からなかったなー。

内面の由梨江大好きストーカーキャラと、外面のクールで理性的な探偵役キャラがあまりにずれてたんで、久我が2人いるor人物誤認の叙述トリックを疑ったぐらい。最後涙腺が緩むシーンもなんか取って付けた感じだし。お前そんなキャラじゃないだろ。そもそも久我を呼ぶ必要がほんとにあったのか?とかね...まぁとにかく説得力のないキャラだった。

久我に限らず登場人物たちがどうにもぎこちなくて、魅力的じゃなかったのもマイナスだったかな。

 

設定は面白いものの、どうしても引き込まれる魅力や真相のインパクトに欠けた作品だった。うーん。