2017年レビューミステリベスト5
年の瀬も近くなり、あわただしい毎日ですがいかがお過ごしでしょうか。
どうも、私です。2017年振り返りミステリランキングをやります。
というわけでタイトル通り、2017年ミステリベスト5を挙げようと思う。年末といえばベストランキング!だよね。
ただし、ここでいう「ベスト5」はあくまでも、2017年に私がレビューした中でのベスト5なので、2017年刊行のものではないので注意。ていうか今年は定番・有名ミステリばっかり読むことにしていたので、ミステリ好きの方には大分今更感のあるランキングになるけども、ご了承ください。
なおかつ、当然ですが独断と偏見によるものなので、色んな意味で偏ったものになっています。ゆるーくご参考にしてもらえたら嬉しい。
第5位「リラ荘殺人事件」(鮎川哲也/角川文庫)
あらすじ
埼玉県と長野県の境近く、かつては個人の別荘であった寮「リラ荘」を、日本芸術大学の学生七名が訪れた。その夜、橘と紗絽女の婚約発表に、学生たちは心のざわめきを抑えられなかった。翌日、リラ荘そばの崖下で屍体が発見される。横には死を意味する札、スペードのAが。そしてスペードの2が郵便受けから見つかり、第二の殺人が起こる。事件は連続殺人の様相を呈し、第三、第四の殺人がー。本格ミステリの金子塔を復刊!
はい、いきなりまだレビューしてない作品です(ダメじゃん)。このあとも幾つかレビューまだ載せてない作品があるけど、この記事アップした後にレビュー記事作ります。無計画。
今年読んだ中では一番古い作品(1968年刊行)にも関わらず、2017年の今読んでも魅力が全く色褪せない「これぞ古典!」な名作だった。
私は読書傾向的にいわゆる新本格が好きなので、古典ミステリに対する評価が厳しいんだけど本作はとても好き。理由としては①人物描写が巧みなので、キャラクターそれぞれが魅力的、②古典にもかかわらず読みやすい文体、③単純明快なトリックにも関わらず見破ることが難しい絶妙なバランス感、が挙げられる。
途中でまさかの展開もありページを繰る手が止まらなくなった。王道ミステリとして万人にお勧めの作品。
レビュー:リラ荘殺人事件 (鮎川哲也/角川文庫)
第4位「螢」(麻耶雄嵩/幻冬舎文庫)
あらすじ
オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。
初麻耶作品なので印象深いという点を差し引いても、非常に優等生なミステリ作品。しかもミステリ者垂涎の「嵐の山荘」モノなのもなかなかそそる。
クローズドサークルってテンション上がるけど、実際読んでみると着地点が難しいんだよね。オチという意味では、本作を超えるクローズドサークルはなかなか書けないんじゃないだろうか。好き嫌い分かれるところではあるが。
また、この作品の最大の評価点は何といってもある特殊なトリックの使い方にあるので、序盤が退屈に思えたとしても最後まで読んでほしい。それに騙されてみるだけでも読む価値はあるんじゃないだろうか。麻耶は本当に頭がおかしいなぁ(褒め言葉)
レビュー:螢 (麻耶雄嵩/幻冬舎文庫)
第3位「夜よ鼠たちのために」(連城三紀彦/宝島社文庫)
あらすじ
脅迫電話に呼び出された医師とその娘婿が、白衣を着せられ、首に針金を巻きつけられた奇妙な姿で遺体となって発見された。なぜこんな姿で殺されたのか、犯人の目的は一体何なのか…?深い情念と、超絶技巧。意外な真相が胸を打つ、サスペンス・ミステリーの傑作9編を収録。『このミステリーがすごい!2014年版』の「復刊希望!幻の名作ベストテン」にて1位に輝いた、幻の名作がついに復刊!
いや、この作品はすごいぞ。今回のランキングでは唯一の連作じゃない短編集作品。9編が収録されているが、そのほとんどが他で類を見ないトリックによる名作ぞろいなのが素晴らしい。短編に使うには惜しいんじゃないかと思えるほどの最上級の素材を、名だたる天才シェフが美しく料理に仕上げました、っていう作品。一篇一篇がまた、めちゃくちゃ味が濃くてね…一気に味わうのが勿体なかった…(まぁ一気読みしちゃったんだけど)
トリックもさることながら、この作品集に通底する「愛と情念」の描き方にも唸らされる。なんていうか、キャラクターの息遣いが聞こえてくる描写力なのだ。かといって、殺害動機が長々と語られるわけでもないのでご安心いただきたい。キャラクターの説明は最小限でありながら、殺人に至った狂気と葛藤がひしひしと伝わってくる。文学作品としてもお手本にしたい文章の上手さ。
因みに本作も1986年刊行と古めの作品ではあるものの、古さは全く感じさせない読みやすいミステリ。リラ荘といい、やはりパワーのある古典作品は時代を超えた名作なんだなぁと痛感する。
第2位「密室殺人ゲーム王手飛車取り」「密室殺人ゲーム2.0」(歌野晶午/講談社文庫)
あらすじ
〈頭狂人〉〈044APD〉〈aXe〉〈ザンギャ君〉〈伴道全教授〉。
奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。
ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである……。
リアル殺人ゲームの行き着く先は!?
歌野本格の粋を心して堪能せよ!
自分でもめちゃくちゃ悩んだけどこれが2位。うーん。いや、正直なところ、純粋にトリックや作品の出来でいうなら鼠たちやリラ荘よりも下なんだけど、やっぱり密室殺人ゲームシリーズはとにかく「面白い!」んだよね。最高。面白さに勝てなかった。というわけで2位。
ミステリ者がミステリに何を求めているのかって多分読み方によって違うとは思うんだけど、でもその根底には娯楽性があると思う。個人的に、ミステリって究極のエンタメ小説だと思ってるので。その「面白さ」を醸しだすために、意表を突くトリック!魅力的なキャラクター!!ドンデン返しの展開!!!とかが配置されている。
そういった視点で見たとき、とにかく密室殺人ゲームは、どうにもミステリ好きにはたまらない斬新な設定で作られているので、もうね、発想の勝利なんだよね。ミステリ好きが高じて、実際に殺人事件を起こしてそれをみんなで推理しあうゲームを始めた、って今までありそうでなかった設定じゃん。それだけで、歌野が「読者を楽しませてやるぜー!」って意気込む姿が見えてくるでしょ。
しかも、この新しい設定のおかげで本来のミステリとしては没になってもおかしくないトリックも美味しく調理されているのが見事。
ぶっちゃけ、外伝に当たる「マニアクス」は全体的に微妙な出来だし、「王手飛車取り」や「2.0」もオチにちょっと不満はあるものの、「ミステリってやっぱ面白いよな!!そうだろ!」と殴りかかってくるような力強さを評価した。だからはやく第3弾出して。
レビュー:
第1位「さよなら神様」(麻耶雄嵩/文春文庫)
あらすじ
「犯人は○○だよ」。クラスメイトの鈴木太郎の情報は絶対に正しい。やつは神様なのだから。神様の残酷なご託宣を覆すべく、久遠小探偵団は事件の捜査に乗り出すが…。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させ、本格ミステリ大賞に輝いた超話題作。他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに!第15回本格ミステリ大賞受賞。
異論は認めない。誰が何といおうと私内第1位は麻耶の神様シリーズなんだ。
『神様ゲーム』と並べようか考えたけど、明確に繋がっているわけじゃないので取り敢えず『さよなら神様』のみ。でもどっちも甲乙つけがたい良さがある。連作短編集になっている分『さよなら神様』の方がやっぱりインパクトのある展開なんだけど、『神様ゲーム』は中盤からの怒涛の勢いと何より頭の中が疑問符だらけになるオチが最高にクールだから、同率1位って感じはある。
神様シリーズの凄いところを語ろうとするとネタバレに抵触するため、詳しくは語れないが、もうね、麻耶はいつでもミステリの枠を外れようとしてくるところが本当に好き。ミステリの限界にチャレンジした作品のうちの一つ。
『メルカトルかく語りき』を1位にしようとも思ったんだけど、あれはやっぱりアンチミステリ色が強すぎて「ミステリとしてのランキング」に入れるのはちょっと躊躇われた。のだが。『さよなら神様』はミステリの枠を超えようとしながらも、ミステリとしての特徴を保持し続けているところが見事。
ミステリ初心者には絶対に貸したくないが(こんなのを初ミステリとして読んだら、他作品を味わえなくなると思う)、ミステリ者には無理やり読ませたい怪作。来年、これを超える読書体験ができるか不安だ(超笑顔)。
レビュー:さよなら神様 (文春文庫/麻耶雄嵩)
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