One week,my room (フリーゲーム/常夜灯)
番外編1.One week,my room (フリーゲーム/常夜灯)
ミステリじゃないので番外編。フリーゲームながらちょっとしたミステリの手法を使っていると感じたので、興味のある方はぜひ。
総評:★★★★☆ 総プレイ時間:周回含め30分程度
おすすめ:可愛いドット絵と鬱エンドが好きなあなたへ
あらすじ(引用)
あなたの救う、小さなちいさな世界。
部屋から出られないけど、脱出ゲームじゃない。
謎解きアドベンチャーだけど、脱出ゲームじゃない。
家具を調べると少しだけ、動きます。
およそ30分から1時間、あなたの時間をくだされば、この世界は救えます。
※本作は、重いテーマを扱っております。
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基本的にこの部屋の中で物語が完結し、1日1行動しかできないのでさくさくプレイできる。
制作者さんが明言されている通り、ホラゲではないもののちょっとした「ぞくっとする」ポイントがあり、Tipsによる補完を入れても文章が少なめのでどちらかというと考察・雰囲気ゲー寄り。また、考察といっても、「ゆめにっき」ほど突き放された感じではないのである程度誰でも共通の「真相」には辿りつけるタイプのストーリー。
何せ1周が本当に短く、ネタバレなしだと特に語ることもできないのだが、演出と「ある仕掛け」がミステリ読み的には面白かった。今回が処女作だそうなので、続く第二作にも期待したい。
※ 以下ネタバレ感想
雰囲気からして「ゆめにっき」系かなと思ったけど、閉塞感は近かった気がする。フリゲでレトロなドット絵にいい感じの音楽使ってると大概自殺エンドが待ってるのは最早お約束感。や、それがいいんだけど。
因みに私は
1お兄ちゃんエンド→2お兄ちゃんエンド(棚に気づく)→3ラジオエンド→4トゥルー
だったのでTips全部開く前にTips0「イマジナリーフレンド」を見てしまった。Tips8「おにいちゃんへ」を開く前にトゥルー行くと、主人公が日記を外に置いた行動が唐突になってしまうので、制作者の意図に添えないプレイになってしまったのが残念だった。
そのあともう一回お兄ちゃんエンドしてTips全部開放。いくつかのTipsの開放条件がイマイチ分からないけど、周回数だけで0以外は開くのかな。
1週目でいきなり謎の怪物ににちゃにちゃと食い殺されて「???」と思いきや、新聞記事には「飛び降り自殺」とあったので、「隣のお兄ちゃんに性的暴行を加えられて自殺」が分かる仕組み。微妙にぼかした表現でそれと分からせるのは下品になりすぎず良い塩梅。
また、1週目後、12/30放送のラジオで少年の好きな番組が終わってしまう(Tips2)ことが分かるので、これが自殺フラグ2つめだと判明。
上記をまとめると、
自殺フラグ1 28日深夜の隣のお兄さん来訪 → 阻止行動)同日に棚を動かす
自殺フラグ2 30日放送のラジオを聞く → 阻止行動)同日にラジオを壊す
がトゥルーの条件と判明。1週目でここまで教えてくれるのはかなり親切設計。(自分は1週目で棚もラジオも弄らなかったので正確には2週目で阻止行動が判明)
また、個人的に「おおっ」と思った工夫としては以下の2点。
①「おにいちゃん」が「隣のお兄ちゃん」「主人公」の2人いること
叙述によるミスリード。
・日記に書かれている「おにいちゃんがやってくる」やカレンダーの「おにいちゃん」は、隣のお兄ちゃん。
・人形や鏡を調べた時やTips8の「おにいちゃんへ」は、主人公。
鏡や人形にはまんまと騙された(?)が、もうちょっと効果的にミスリードに使えた気もする。
②プレイヤーは、主人公のイマジナリーフレンドであること(妹)
①とも絡んでくる。Tips8を書いたのはプレイヤー(妹)。トゥルーでの独白で分かるように、このゲームは「イマジナリーフレンドであるプレイヤー(妹)が、主人公(おにいちゃん)を自殺フラグから守る」という趣旨。地の文はプレイヤー(妹)なので、実は日記からしか主人公の心の声は分からない。
ラジオを聞きたいと言っていたのに、プレイヤーがラジオを壊すのはこのため(主人公ではないから壊せた)。
全体的に短編のミステリっぽく仕上がっており、個人的にはお兄ちゃんエンドで突然無音になるのはやっぱりぞくっとした。1週間は生きれるとおもってたし。優等生な作品だったと思う。
以下はちょっとした違和感や個人的に惜しいと思った点。
・お兄ちゃんエンドがなぜ自殺の引き金となったのか?
以前からお兄ちゃんには性的暴行を加えられていたはずで(屑かごのティッシュ)、12/28に突然自殺フラグに変わった理由が薄い。また、31日に自殺するので時間差も謎。
・妹(プレイヤー)は何故12/30にラジオが終わることを知っていたのか
周回プレイなんだから仕方ないだろ!って言われたらその通りだけど笑 個人的にはここまで凝った作りなので、「周回する意味」もあったほうがいいかなぁと。
お兄さん来訪は定期的だったので阻止する理由があるだけに、「ラジオの終了」という未来のことを知っているかのような(メタ視点でしか解決できない)行動はちょっとだけ違和感がある。
(この辺の処理として秀逸だと思ったのは、『魔女の家』(ノーミスクリアできること自体に意味があるという点)、『UnderTale』(言わずもがな周回ゲーの名作))
・お母さんがゲーム浸りであることや子供の貧困という時事的社会問題を取り入れながら、シナリオに余り関わらない点
・屑かごを調べると鏡が見れるようになるギミック→関連性あるのか謎(押入れ→CDは関連性あるのに)
・棚が勝手に戻る理由
これは今理由に気付いたけど、
プレイヤー(妹)が棚を動かす→主人公からしたら「勝手に棚が動いた」ので元に戻す→日記(主人公目線)「棚が勝手に動いてた!何でだろ?」
というミスリードっぽい。妹として動いてる時の記憶がないような記述もあるし(ラジオが勝手に壊れていた)。プレイヤーが二重人格に気付かないと、「主人公が動かした棚を誰かがいつの間にか元に戻した」ように読める。
ただ、そうするとイマジナリーフレンドなんだか二重人格なんだかちょっとごちゃまぜ過ぎてすっきりしないかも。「妹はいつも傍にいる」という記述からは、妹の行動を認識してるようなので。
長々書いてしまったけど、それくらいギミックに富んだ面白い作品だった。
叙述トリックって絶対周回ゲーに向いてると思うからそういう手法を取り入れたフリゲ―もっとやってみたいなぁ。
※考察について間違い・勘違いがあったらご指摘ください