番外編9.スーパーダンガンロンパ2 (推理アクションゲーム/スパイクチュンソフト)
久々にやったら本当によくできたゲームよな…と思い返したので感想まとめ。
v3の方が個々の事件におけるミステリ難易度は高いと思うけど、全体的な完成度やシナリオは2が一番かなぁ。オチがとにかく綺麗。
総評:★★★★★ 総プレイ時間:30時間程度(2日くらいで完走)
おすすめ:必ずダンガンロンパ無印をアニメかゲームで履修してからプレイすること。キャラゲーと侮るなかれ、ある章の事件はミステリとしても凝った事件でインパクトが大きい。
※アニメ「ダンガンロンパ3」は本作の前日譚や後日談にあたり、あらすじだけでネタバレのオンパレードなのでご注意を。
あらすじ(steamより引用)
ジャバウォック島-かつて人気の観光地として知られ、いまや無人と化したこの島は、奇妙なことに今でも綺麗に整備されていた。修学旅行のためにこの島を訪れた「私立希望ヶ峰学園」の生徒たちは、楽しい時間も束の間、モノクマの陰謀によりコロシアイを強いられてしまう。コロシアイの幕が再び上がる中、この島を脱出するための唯一の希望はこの島の謎を解き明かすことだった。だが忘れてはならない。真実の先に待ち受けるのが、“希望”とは限らないということを…
Steamでは1・2・v3とセットで7000円以内で購入可能。セール時を狙えば4000円くらい。vitaを持っていればそちらで1・2バンドル購入もできるが、まぁこの買い方が一番安上がり。
ダンガンロンパシリーズといえば、圧倒的なまでに個性的な「超高校級」によるコロシアイ・サバイバルゲーム。豪華声優陣にもかかわらずサクサク死んでいくところが非常に贅沢(「この声優は大御所だから最後まで生き残りそう」というメタ推理ができないところが面白い)。
本作スーダン2の特徴は、舞台が南の島なので無印に比べて「明るい」「開放的」なはずなのに「付きまとう薄気味悪さ」だろうか。あとはいろいろな施設が出てくるので、v3までを含めても「殺害に使える道具」のバラエティが一番広い。
また、シリーズ屈指のトリックスター「狛枝凪斗」の動き方がトリッキーでストーリーをガンガンかき乱してくるところが、個人的には非常にツボ。
無印で「ここ惜しかったな」という部分をきっちり改善してきている点も好印象なので、満点の★5つとした。賛否両論のv3よりも万人にお勧めしたい一作。
※以下、本作及びダンガンロンパ1のネタバレを含む感想
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《全体評価》
1章
トリック:☆☆
犯人当て:☆☆☆
ストーリー:☆☆☆
トリックというか殺害方法はすぐに思いつくが、裁判パート中に重要な手掛かりが出てくるので、捜査パートのみでの犯人当てはやや困難か(狛枝がスケープゴートとして第一容疑者に上がってきてしまうのもあって、犯人当ての難易度は少々上がると思われる)。
2章
トリック:☆☆☆
犯人当て:☆☆☆☆
ストーリー:☆☆☆
事件現場をうろうろする容疑者がやたらと多いので、捜査パートまでの犯人当ては1章なみに難しい気がする。人の動きがつかめればトリックというトリックはないが、「ポイ捨て禁止」「3人以上が死体発見でアナウンスが流れる」等の固有の縛りを活かした章。
3章
トリック:☆☆
犯人当て:☆☆
ストーリー:☆☆
後段で詳しく述べるが、犯人の動き方にやや違和感が残る事件。また、犯人当ての段に至っても推理がいまいち詰められていなかったところが惜しい。
4章
トリック:☆☆☆
犯人当て:☆☆
ストーリー:☆☆☆☆
メカ弐大特有の仕様や建物自体を使った大がかりなトリックなど、今までの事件と雰囲気の異なる4章。いいよね、トリックハウスを使ったミステリ、ロマンだよね。
「なぜ○○は駆けつけることができたのか」が捜査パートで真っ先に違和感として残るので、犯人当て自体は簡単。あとはトリックを詰めるだけ。多少ミスリードになるのは「自殺」の可能性を匂わせてくるところか。
5章
トリック:☆☆☆☆☆
犯人当て:☆☆☆☆☆★
ストーリー:☆☆☆☆☆
ダンガンロンパ屈指の名事件、第5章。この事件とv3の某事件のためだけに、ガチのミステリファンにもダンガンロンパやってほしさある。
犯人当ては「絶対に不可能」。
トリック自体も近いところまでは誰でも見抜けると思うが、彼の「悪意」、いや「真意」をどこまで見抜けるかが本事件の一番のポイント。
ダンガンロンパは「クロを指摘しないと全員オシオキ」というシステム上、「ハウダニット(どうやってやったのか)」からの「フーダニット(誰がやったのか)」が主眼となるが、本事件だけは「ホワイダニット(何故やったのか)」がキーになってくる。このシステムの中でよく作ったなぁ。
《個別感想》
1章「絶望トロピカル」
被害者:十神白夜
犯人:花村輝々
・いきなり無印引き継ぎキャラの十神を殺してくるあたりがさすダン(さすがダンガンロンパ)。のちに偽物と判明するわけだが、偽十神さんのほうが頼りがいもある上に心意気がイケメンと評判。
・屋敷を事前に掃除していたり動きがあからさまに怪しい狛枝が犯人――?!と思いきやまさかの輝々が脱落。癒し系エロキャラが一章で消えるとは思わなかった…ダンガンロンパ、軽薄なキャラに容赦がないな(無印のレオンを横目に)
・捜査パートでは証拠が集まりきらないので犯人当ては厳しいが、裁判が中盤まで差し掛かれば大体トリックも犯人もわかるので、ミステリ難易度は低め。
2章「海と罰。罪とココナッツ」
被害者:小泉真昼
犯人:辺古山ペコ
・ゲーム内ゲームの「トワイライトシンドローム殺人事件」が怖すぎてさあ!!!!!!初見時は夜にプレイできませんでした(ビビり)。
・でも女子勢の水着が眼福だったのでこの章は結構好きです。
・写真は2章以降も証拠になりそうだなーと思っていたので真昼ちゃん退場は悲しかった。ペコちゃんも散り際がかっこよくてもう…2週目やったときにも裁判終盤からボロボロ泣きました。地味に1章裁判でも、九頭龍がペコちゃんかばってたりするんだよね。結構自然な流れなので気づかなかったけど、九頭龍・ペコちゃんのミッシングリンクの伏線はほかにもあるのかも。
・トリックというほどのトリックはないけど、「単なるキャラ付け」と思っていたペコちゃんの竹刀がトリックに使われていたのは「お、やるじゃん」と思ったところ。
・ダンガンロンパ、百合に厳しすぎ案件(無印の朝比奈&さくらちゃんに続いて日寄子&真昼ちゃんまで…)
3章「磯の香りのデッドエンド」
被害者:澪田唯吹、西園寺日寄子
犯人:罪木蜜柑
・2人殺す必要なくない?!!!!(悲しみ)ダンガンロンパお約束の3章は2人死ぬの法則発動。つらい。しかも華やかな女子勢ばっかり…
・あとこの章の病院、めちゃくちゃ怖くて無理です。夜病院行ったときに、廊下でぽつんと立ってる澪田が怖すぎて死んだ。
・トリックとしては…うーん。蜜柑ちゃん明らかに怪しいので、トリック以前に犯人当ては難易度低い。あとミステリ勢として、まじめにこの事件考察するとまぁまぁ粗がある。長いので以下灰色字は読み飛ばしてください。
①このトリックだと終里ちゃんも犯人になりえる(多分)。
「日向が自殺映像を見たときに、病院内の会議室でその映像を作ることができた人物」で犯人を絞っているので。終里と狛枝は「絶望病にかかっていたのでできなかった」ということになっているが、本当に死にかかっていた狛枝はともかく終里ちゃんは本来きちんと行動を詰めても良かったのではないか。まぁ蜜柑ちゃんの失言と自白で犯人確定しちゃうんだけど。
②日寄子殺しと澪田殺しのトリックの整合性のなさがちょっとおかしい。
この事件は、日寄子と澪田の殺害順序誤認トリックと澪田の自殺誤認トリックが軸になっている。のだが。
これらトリックを使うことによる「スケープゴート」が存在しないのが明らかにおかしい。普通トリックは「自分が犯人の候補から外れるため」にやるもので、特にダンガンロンパの場合は誰かを絶対に指名しないといけないので「犯人の誤認」が目的になるはずである。
●澪田をスケープゴートにして、「日寄子を殺した後澪田が自殺したように見せかけた」というのが一番やりやすそう。なのに、むしろこの事件の場合は「澪田が死んだあと突如日寄子の死体が湧いて出た」という見た目になっており、やる意味がない。何なら日寄子の死体をもとから見せておけば、「日寄子の死体を現出させたのはだれか?(=すでに死んでいた澪田にはできない)」という余計な議論が出てこない。
一応「カメラの残骸を調べられたくなかったから」という理由は出てくるが、まぁ普通に考えて死体を見つけたら現場を色々いじるよりも人を呼びに行くと思うので、死体を隠した理由にはちょっと足りない気がしている。
●裁判序盤の展開通り、日向君(第一発見者)をスケープゴートにする予定だったというのは確かにありうる。が、それでもやっぱり日寄子死体の現出はやっぱりいらない。もし九頭龍が来ていたら二人で見に行ってしまって、発見アナウンスが流れるし、日寄子の死体現出トリックも実行する隙が無くなる可能性が高い。
そういや今更だけど、「死体を3人以上が発見したら発見アナウンスが流れる」というやつ、逆手に取ると「犯人の次に死体を発見した人(=善意の第一発見者)」は100%犯人ではないことを証明できるよね。
今回の場合、日向君だけだとアナウンスが流れなかったけど、そのあと人を呼びに行ったときに、もう一人だけ現場に入れてみて「アナウンスが流れた(=発見3人目)」なら日向君は確定シロ、「アナウンスが流れない(=発見2人目)」なら日向君or現場に入ったもう1人のどちらかがクロになるのでは。まぁどうでもいいんですが。
4章「超高校級のロボは時計仕掛けの夢を見るか?」
被害者:弐大猫丸
犯人:田中眼蛇夢
・館トリックきたーーー!!!手が込んでてなかなか好きだな、この章。
・ただ、「誰がどの部屋に泊まっていたか」を覚えていれば「眼蛇夢が時計の音に気付いて集まることができた」ことに違和感を感じるので、割合犯人当ては容易。とはいえ、自分は弐大の自殺説も結構真面目に考えてしまった(狛枝にミスリードされるまでもなく無印との符号には気が付いていて、しかもこの館にさくらちゃんの像があったので…)。
5章「君は絶望という名の希望に微笑む」
被害者:狛枝凪斗
犯人:七海千秋
・問題の5章。このトリック好きすぎる。完璧だよね。
・≪全体評価≫でも書いた通り、この事件は「何故やったのか(ホワイダニット)」から「アタリの消化弾はランダムなので推理不可能」だった犯人を「推理可能」に導いて「誰がやったのか(フーダニット)」に終着させるという流れが素晴らしい。しかも根拠は「狛枝凪斗は「超高校級の幸運」だったから」という。いやはや。
・無印の欠点のうちの一つが「超高校級という設定があるのにあまり活かされていない、もしくは活かした結果かえって犯人を限定させてしまっている」というところ。レオンが代表だが、「このトリックを完遂できるのは○○という才能を持っている××だけ」みたいな推理ができてしまうので、実はトリックに才能を組み込むのは(犯人視点で)少々ためらわれるところ。
スーダン2でもペコちゃんや眼蛇夢の事件では、才能ゆえのトリックを使って特定されてしまうので実際諸刃の剣なのだが、5章は逆に被害者の「超高校級」がさく裂して「自分でも意識していなかった犯人がでっち上げられ」「あまつさえ、推理不可能な犯人が特定できてしまう」という逆転の発想になっている。
・…とはいえ、5章の神っぷりはうまく文章にできない。うーん。異常な「ホワイダニット」が好きすぎるという好みの問題もあるんだけど。これをまさかゲームでお目に係るとはなぁ…
・実際やってみると衝撃がすごいんだよ、この章。そもそも、どう考えてもラスボスの狛枝が、苦悶の表情を浮かべどえらい残虐な殺し方で死んでいるところが見つかるって時点でめちゃくちゃびっくりする。ラスボスをこんな殺し方できるやつがこの中にいる???ってふつう思うじゃん。思うじゃん…
スーダン2は冒頭でも述べた通り、とにかくラストの裁判がアツくてしかもまとめ方も美しくて最高なのだが、ミステリ的な感想としては以上で筆をおく。
3章とか結構突っ込みどころもある事件が多いのだが、それでも5章の完成度の高さとシナリオの綺麗さ、各キャラの魅力(完全に趣味の範疇だが、個人的には2の子たちが一番人がよさそうなキャラが多くて好き)とどれもシリーズ随一なので全然許せてしまう。
ダンガンロンパシリーズ、やっぱり新作出ないのかなぁ。v3より先の世界が見たいです。