好きなものだけ食べて生きる

日々雑感(ミステリ感想中心)

ダンガンロンパ霧切 1(北山 猛邦/星海社)

53.ダンガンロンパ霧切 1(北山 猛邦/星海社

総評:★★★☆☆
オススメ:ダンガンロンパシリーズをプレイした方へ。ゲーム性のある殺人事件が好きならば一読の価値はあります。

 あらすじ(引用)

謎の依頼を受け集結した五人の探偵たちを待ち受けていたのは「犯罪被害者救済委員会」が企む『黒の挑戦』を通じた連続探偵殺人事件の幕開けだった…!原作ゲーム『ダンガンロンパ』のシナリオライター・小高和剛からの直々の指名を受け、「物理の北山」こと本格ミステリーの旗手・北山猛邦が描く超高校級の霧切響子の過去ー。これぞ“本格×ダンガンロンパ”。

 
霧切さんが「お姉様」だと...?!

が初見の一番のインパクトでした。笑 あざとすぎか?(すみません)

普通に面白かった。スピンオフの小説は得てして微妙な出来が多いのであまり手に取ったことがなかったが、本作は良かった。(knkwさん、オススメいただきありがとうございます!)


ダンガンロンパの醍醐味はやっぱり、ゲーム的な殺人事件でたくさん人が死に、犯人も命がけで殺しにかかるというところだと思うので、スピンオフだとどうするのか疑問だったが、いやなるほど。良い設定だった。

探偵図書館!犯罪被害者救済委員会!黒の挑戦!

以上のコストから、次の探偵を召喚する!

やば〜〜〜テンション上がる!笑

 

いや、完全に厨二じゃんと言われてしまうと身もふたもないのだが。

ダンガンロンパ的な設定が好きな人はこういう、怪しい組織の暗躍とか、金に糸目をつけない非日常的な異常犯罪とか、犯人vs探偵とか、そりゃ好きでしょう。

 

導入も非常に良きですね。いきなり変死体が3つも上がる。しかもバラバラ殺人。容疑者は状況的に、霧切響子一人に絞られてしまっている。真相は如何に、という。

短編ミステリという感じの難易度&読み応えだけど、まぁミステリの質としてもそんなに悪くないのでは。ガチ難易度を求めている人には肩すかしかも。

 

あと個人的には、文体が少々媚びすぎていてそこだけうーん...という感じ。

ダンロンファン層を考えてラノベっぽくしたのかな。改行が多すぎるのも個人的には好きじゃない。でもまぁ、スピンオフということを考えれば許容できる範囲ではある。

 

ほぼ今後の導入編というか、世界観の説明をする巻だと思うけど、なかなか期待のできる1巻だったと思う。

 

なお、北山猛邦は正直、例の『アリス・ミラー城』殺人事件しか読んでないのだが、あれは文体も悪くなかったし、物理トリックはよかった。個人的には壁本だけど...

霧切も話の畳み方で壁本にならないといいな...残念ながらちょっと不安だ...

参考リンク:

『アリス・ミラー城』殺人事件 城シリーズ (北山猛邦/講談社文庫) - 好きなものだけ食べて生きる

 

ダンガンロンパ霧切 1 (星海社 e-FICTIONS)

ダンガンロンパ霧切 1 (星海社 e-FICTIONS)

 

 

※以下、ネタバレあり感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロンパのメタ読みとして、当然霧切さんは犯人たり得ないので、じゃあ語り手の結ちゃんが犯人...いや、でもさすがにここまで探偵然とした語り方で叙述トリックは無理だよな...

と思っていたら、やっぱり流れ的にも結ちゃん≠犯人となったので、犯人はどこに隠れているのか?というシンプルな謎に。

正直、ちょーっと無理のあるトリックではあったけどうん、まぁ、物理トリックはねぇ。こんなもんじゃないですか。

それより、犯人が脚を失っていることを、犯罪被害者救済委員会との会話の中できちんと伏線張ってた(「自分をこんな惨めな姿にした人間が〜」の部分)ところが好印象。

あとは、「相手に合わせた探偵の変装をした」のではなく、「自分に似た顔の探偵を探して、トリックのために殺した」は発想の逆転として面白かった。

探偵図書館の設定とか、被害者救済委員会の用意するトリックのぶっ飛び方とか、諸々現実離れしている作品ならではって感じ。

 

とはいえ、本作の魅力はネタバレなし感想でも述べた通り、トリック自体よりも厨二感てんこ盛りの舞台設定

特に、「黒の挑戦」では

・場所

・凶器

・トリック

・それぞれにかかるコスト

・条件に鑑みた探偵の召喚

が明記されており、ここもゲーム感があって楽しい。

(エンタメとしてのミステリを引き立ていて、個人的にめちゃくちゃ興奮するのだけど、何故こんなに興奮するのかはちょっと論理的に説明できないですね...一種の厨二病と思ってほしい...)

 

探偵役は殺すことができない、とか、フェアに戦う必要がある、みたいな条件にがんじがらめなところも非常によいです。

ダンガンロンパに限らず、インシテミルや密室殺人ゲームもそうなんだけど、ミステリのお約束をきちんと守らせているゲーム的なミステリがすごく好きなんだよね。

ミステリのお約束って、実はかなり現実離れしているので。

なんかその辺の制約をエイヤで片付けてくれていると、読む側も何も考えず、純粋に楽しく謎にのめりこめるんだよね。

 

作りが本当にゲーム感溢れてるし、このままゲームにしてほしかったなぁ。もったいない。

 

取り敢えず1巻の感想は以上。2巻までは読んでいるので、続きはまた改めて。引きも非常に良いよね。ダブルゼロクラスの探偵を召喚する、13億かけたトリックとは一体――!!?