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日々雑感(ミステリ感想中心)。各エントリでは前半にあらすじとネタバレなし感想、後半にネタバレあり感想を掲載しています。

放送禁止  ぼくの3人の妻(監督・脚本:長江俊和)

番外編19.放送禁止  ぼくの3人の妻(監督・脚本:長江俊和)

総評:★★★★☆
おすすめ:人怖系のモキュメンタリーが好きな方へ。考察で脳汁ドパドパになりたい人へ。

あらすじ(引用)

『某テレビ局で放送されるドキュメンタリー番組として制作された映像。放送日は決まり、撮影も終わっていたが、ある事情により、放送されることはなかった』
あるドキュメンタリー映像──
薄暗い場所。揺れる蝋燭の炎。祝詞を高らかに読み上げる霊媒師。祈祷を受ける3人の女性。
彼女らは、1人の夫を共有する一夫多妻制の家で暮らす妻たちだった。
トランス状態に陥っていた女性たちが言う。
「私は夫を殺しました」
「私は夫を愛していた。だから殺したの」
「夫が憎かった。だから殺しました」
3人の妻のなかで、誰が彼女たちの夫を殺したというのか。
その答えは、放送禁止となった1年前のドキュメンタリー映像に隠されていた。
ーー事実を積み重ねることが、真実に結びつくとは限らない。


放送禁止シリーズは、評判だけ知っているモキュメンタリーで、サブスクに全く落ちてこないのでリアタイできるのをずーーーっと楽しみにしていたんだけど、ついに映画になったのでワクワクしながら観に行った。

結果、もうちゃんと求めていたものがお出しされたので今、満足感がすごい。ていうか過去作も超観たい。考察というか、推理するのが楽しすぎる。あの阿津川先生や綾辻先生も「放送禁止」好きだというのがめっちゃわかりみがすごい。こういう謎かけだけのミステリドラマもっとやってほしいよねぇ。

 

放送禁止シリーズが偉いのは、

①心霊現象のようなガチホラーではなく絶対に人怖(人為的な作為が背景にある)、

真相が一意に定まるように伏線やヒントが張り巡らされている

というところ。「いろんな解釈がありうるよね〜」などと誤魔化してないところが良い。ホラーというかちゃんと「ミステリ」している。

 

といっても、正直演出としては結構ちゃんと怖いところもあった。(私が怖がりすぎなのもあるけど、)鏡に映ってる人影、ドアから覗いている人(後述するけどどっちも生きている人)、突然の悲鳴と、怖い演出はあったしやっぱりビビった。

まぁでも、映像作品、エンタメ的なスパイスとしての演出なのでどれも良かったな。やっぱ多少怖がらせや刺激的なパートがないとダレちゃうし。

 

映画だから気軽に見返せないのが惜しいんだけど、答え合わせのために2回目観たいくらい、本当に良い映画体験だった。

 

housoukinshi.com

※以下、ネタバレあり感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


●登場人物

・萩原紘二

WEBデザイナー。3人の妻を持つ。共同生活を送るうちに、霊的現象に遭遇し、この家には3人の霊がいると言い始める。

・中瀬由子

4人の生活を金銭的に支えている会社経営者。紘二のことはペットみたいな可愛さもあり、男らしさを感じることもある。紘二と別れることは考えられなかったので、共同生活を受け入れた。耐えられなくなって殺したと自供。

・乾麻莉奈

元モデルで現フリーター(無職)。紘二は由子の彼氏だったから好きになった。今は愛を独占したい。夫を愛していたので殺したと自供。

・内野楓

看護師。キャバクラで働いていた時に麻莉奈と知り合った。紘二の好きなところは優しいところ。共同生活には違和感を感じている。夫が憎かったので殺したと自供。

 

●手がかり ※時系列は若干ごちゃごちゃ。覚えている限りで書き出し。

・性生活について

3人の嫁は交代で紘二と寝室を共にする。由子は「3人や4人ですることもある」、麻莉奈は「2人でしたい」、楓は「好きな人以外に見られるなんて耐えられない」。紘二は「3人と平等に寝るのは大変。本当に疲れる」と笑いながら語る。

 

・紘二について

由子は、一年前にちょうどパートナーと別れたタイミングで、紘二にナンパされて付き合い始めた。由子は、紘二の嫌いなところとして「心霊現象みたいな話をしたがる。幽霊なんていないのに」。麻莉奈は由子と腐れ縁。麻莉奈は、紘二の嫌いなところとして、「過去の男の話を聞きたがる」。紘二には、消息不明の兄がいた。3人の妻がいることは両親には言えていない。

 

・3人の嫁の関係

麻莉奈は楓に雑用を押し付けがち。由子はそんな麻莉奈を責める。圧倒的な収入がある由子は共同生活の中でもやたら高圧的なので、麻莉奈はそれをウザいと思っている。紘二と夜一緒に寝ている時に、「二人でこの家を出よう」と提案するが、「そんなこと言わないで」と断られる麻莉奈。

 

・関係の変化

「平等に愛する」はずの紘二だったが、甲斐甲斐しい楓へのスキンシップだけが増えていく。麻莉奈も由子も気づいている。スタッフにそのことを指摘された紘二は「3人のことは平等に愛しているままだ」ととぼける。

 

・心霊現象

「ギターの音が聞こえる」「夜中、男に首を絞められた」と訴える紘二。

病的にも見える霊現象への執着から、自分の部屋に監視カメラを設置するようになる。そのカメラには、不自然な人影や、窓は開いていないはずなのに揺れるカーテンなどが映されていた。また、霊現象が撮れるかもしれないとの思いで、部屋の中を撮影する紘二。あとから見てみると、不自然な人の顔らしき映像が映り込んでいた。

紘二は、由子から「開かずの扉」だと説明されている部屋があることを紹介する。鍵がないので入れないが、この家にある違和感はこの部屋のせいではないかと怪しんでいると説明する紘二。扉に挟まっていた3枚の山の写真を発見した紘二は、3人の妻に見覚えはないか聞くが3人とも知らないと答える。

度重なる霊現象を踏まえて、とうとう「開かずの扉」を斧でぶち破る紘二。部屋の中には、ギターや絵画がしまわれていた。「やっぱり、この部屋が家の違和感の根源だと思う」と語る紘二。

部屋にあった絵画を3人の妻の前に並べ、見覚えがないか聞くが、3人はまた知らないと答える。問い詰める紘二に、麻莉奈は絶叫して部屋を飛び出す。「ごめんなさい、許してください、私が悪かったんです」と謝る自撮りを撮影していた麻莉奈。

 

・監視カメラ

紘二と一緒に寝ていた楓が突然叫び、慰める紘二と慌てて部屋に入ってくる由子と麻莉奈。「怖い夢を見た」という楓を抱きしめる紘二を見て、「いつもいつも私の男を取りやがって、泥棒猫!」とヒステリックに叫ぶ麻莉奈。

 

・麻莉奈の入院

ある日、麻莉奈が泡を吹いて倒れていたところを楓が発見する。睡眠薬のオーバードーズだったようだ。すぐに吐かせて病院に搬送したので、命に別状はなかった。

「こんなに変なことばかり起こるのは、霊現象のせい。僕は家族を守りたい。この家はやっぱり何かがある。引っ越そう」と由子に語る紘二。

「霊現象のせいにしたいだけでしょう」と言い放つ由子。「はっきり言って、霊現象なんかのせいじゃない、紘二が楓にばっかり構うから、繊細な由子は耐えられなくなった。そのせいで3人はめちゃくちゃになっている。正直、...あなたなんかいなくなれば、私達は救われるのに」。

由子の言葉を聞いて神妙な顔をする紘二が呟く。「...そうかもしれない」。

 

・楓の真意

ある夜の監視カメラの映像。寝ている紘司の腕に注射を打とうとする楓。間一髪気付いて飛び起きる紘二。

「どうして殺そうとするんだ!」

私が好きなのは麻莉奈。いじめてほしいとお願いして、そうしてもらっていた。麻莉奈と住みたいから、こうやって生活していたの」。

 

・収束

久々に取材班が萩原家を訪れると、4人はにこやかに出迎えてくれた。麻莉奈も体調がすっかり良くなったらしい。

「自分に正直に、意見を言うことにしたんです。私は麻莉奈が好きで、麻莉奈は紘二さんが好き」。はにかむように語る楓。照れ笑いする麻莉奈。

「今は4人でまた仲良くやっています」と語る紘二に、「霊現象じゃなかったでしょ?」とからかう由子。「...うん、そうだった。」

 

・祈祷

しかし、1年後、霊現象に悩まされていた3人の妻が祈祷師の元でお祓いを受けていると、トランス状態になった3人はそれぞれ自白した。

「私が夫を殺したんです」。

撮影が終わり、カメラが床に置かれる。男性が映る。「今の、撮れましたか?」

 

・エンディング

撮影班が再度萩原家に向かうと、チャイムを押しても誰も出ない。カメラを家の中に向けると、空き家になっているようだ。

 

●真相に向けての手がかり

・由子「私達、何度も繰り返しているんです」

心霊動画を合成・編集して「作っている」紘二

・紘二の手元には、同じ4人の構図で、紘二とは別の男と映る3人の妻の写真が3枚

・開かずの間にあった絵画にサインされていた「Koichi」の文字

――あなたには、真相が見えましたか?

 

 

●考察(真相)

3人の妻たちは、紘二の前にも3回同じ人を好きになって同棲し、「夫」を殺していた

・死んだうちの一人は、紘二の兄、コウイチ。

・紘二は、兄の死の真相を究明するため、3人の妻と共同生活を営んだ(由子をナンパして潜入した)。取材が入ったのを契機に、①楓だけを構って3人の均衡を崩すことでいざこざを生み、②心霊現象をでっち上げ、殺した3人の幽霊がいるかのように振る舞うことで精神を不安定にした(特に麻莉奈)。そして、祈祷師に連れていって自白を促した。

・楓が紘二を殺害しようとした時、悲鳴をあげたのに、(これまでと違って)由子も麻莉奈も助けに来ないのは、これまでと同じように殺されそうとしているのだと思って、見殺しにしようとしたから。

 

おそらく以上の真相までは硬い。ただ、これが真実だとして、若干気になるところがいくつか存在する。

 

●残された謎

1.紘二の生死

冒頭の祈祷シーンは、「紘二を殺した犯人は誰か」のように見せかけて、これまでに殺害した3人の夫たちについての犯行供述シーンでほぼ間違いない(3人の誰かが犯人なのではなく、全員が犯人。あらすじもよく見ると「紘二を殺したのは誰か」ではなく「夫を殺したのは誰か」としか書いていない)。

映像中で、紘二のはっきりした死亡シーンはない。

解釈が分かれているのは以下のシーン。

・「撮れました?」と言っているのが紘二っぽい→紘二が祈祷師に3人を連れていった?

・最後の窓辺に飾ってあるサボテンが、3つから4つに増えている→犠牲者の数だとすれば紘二も殺された?しかし、いつ?どの時点で?

・2階の窓に二人の女性の物陰があるらしい→3人のうち誰か1人は殺されている?

 

2.なぜ祈祷に行ったのか、自白したのはなぜか。

ラストの方、若干因果関係に疑問がある。

麻莉奈発狂&入院→楓による殺人未遂→4人が円満に→1年後、祈祷

となっていて、楓の殺人未遂の後からの繋ぎに違和感がある。

殺人未遂まで起こされたのに円満になったのは、表面だけ見れば楓の本心がわかった紘二が楓ばかり構っていたのを是正し、3人を平等に愛することにしたからなのかと思えるのだけど、真実(紘二は心霊現象をでっちあげて3人を告発しようとしていた)を踏まえると、円満関係に戻す意味がないので(ギスギスさせるのが目的の一つだったはず)、このパート本当に違和感なんだよね。

逆に、ここさえなければ、ギスギスが高まって心霊現象に本気で怯えた3人が祈祷師のもとに行って、罪の意識からとうとう告白した...と言う流れが自然になる。

しかも、このパートでわざわざ、由子が「やっぱり心霊じゃなかったでしょ」と紘二に言及していた。心霊現象を否定している。

あと、他の人の考察で気付いてさらに違和感あったのが、紘二がPCで心霊現象小細工しているところで、由子が扉のそばから中を伺っているのが映っていて(だいぶホラーなシーンなんだけど)、おそらく紘二の小細工には気付いているらしいこと。

そんな由子が、紘二の企みに乗って、祈祷師の怪しげな儀式如きで自白するだろうか...??

 

あまり確証はないんだけど、ありそうな推理としては2種類。

・楓による殺害未遂と円満パートは時系列が違う説

楓が麻莉奈を好きなのは、これまで3人殺害しているので、麻莉奈自身はもっと前からわかっていたはず。円満パートだけ心霊現象で由子たちを追い詰める前に撮ったのかなと思ったけど、そうすると楓による殺害未遂シーンで、紘二が「麻莉奈にはつらく当たられてだろ?!」がおかしいので、あのシーンも心霊現象前だったとか?

だとすれば、麻莉奈発狂・入院→ガンギマリ紘二とヒス由子→(なおも続く心霊現象)→祈祷シーン  になるので多少違和感は減る。

ただ、なんでそんな編集したの?という謎も出てくる。でも、このVTRの編集者は祈祷シーンで既に楓→麻莉奈が分かるのに、敢えてラストまで意図的に隠した編集にしており、手を入れるタイプの人だというのは分かる。そういう人なら、何らかの意図で時系列を弄りかねない?

・祈祷による自白もお芝居だった説

この説は大分こじつけだしあんまり自信ないけど、紘二の企みに由子が気づいていた場合、外部の記者にまで真相に近づかれているので、何らかの形で蹴りをつけてVTRと紘二を闇に葬る必要がある。

それで、紘二を油断させるために祈祷で自白した。誰を殺したか、どうやって殺したかはしゃべっていないので、何も証拠はない。紘二が生きているならなおさら、TVクルー的には「何の話?」となるはず。

ラストの「撮れました?」が紘二なら、これで3人の自白をとれた、と油断した可能性がある。その隙をついて殺し、4人目の墓標としてサボテンが増えた。紘二が死んだので、4人のドキュメンタリーは「対象者(由子)の依頼によって」(だったっけ?冒頭に書いてあったやつ)、お蔵入りになり、3人の妻たちの思惑通り事件は闇に葬られた。...とかね。

今回のドキュメンタリーフィルムが紘二の企みだとすると、冒頭に断りのある通り「お蔵入りになった」っていうのがおかしくて、告発なんだからお蔵になるってことは紘二の作戦は失敗したってことを意味するはず。

ってなると、やっぱりサボテン4つといいやっぱり紘二は殺されたんじゃないかなーと思うんだけどどうかなぁ。

でも人影2つの意味はやっぱりよく分からない。強いていうと、麻莉奈だけは紘二に「二人で家を出よう」とか言っていたし、1番殺人を悔いていそうでメンタルが弱かったので、由子が口封じした?のかなと思ったけど、楓が許さないよな...。むしろヤンデレ楓が麻莉奈も殺しちゃったとかの方が有り得そうか?

 

●感想

・性生活の話、単にセンセーショナルにしたいだけじゃなくて、そのあと寝室に二人でいる時にいろんな事件が起きるのでその設定のためだし、由子が「3人、4人でやることもある」、楓が「好きな人以外に見られるのは耐えられない」って言ってるのは、楓が女性二人のどちらかが本命だという話の伏線にもなってる(と思われる)。

・女性陣のギスギスした感じがまーじでうまい。楓が家事全般してて、話す時もオドオドしてるから残りの二人が自然とマウント取ってるように見える。演技力...。3人ともいそうなんだよな。でも、真相としては3人の不仲は表層的な話で、一人の男を巡ってずっと一緒にいるので、麻莉奈が言ってた通り「腐れ縁」なんだよなー。しかし毎回同じような破綻の仕方してるんだから、麻莉奈はもうちょいヒス起こさないでも良いんじゃないか?

・夫役も、妙にナヨナヨしてて、霊現象にヒス起こして、気持ち悪さが上手い。まぁ復讐のために最後まで正気でいた人なんだけども。

 

テレビでじっくり再鑑賞したい。ほんと面白かったな。

他の人の考察も気になるので見てきます。