111.medium 霊媒探偵城塚翡翠(相沢 沙呼/講談社)
総評:★★★★☆
オススメ:連作短編集。特にミステリ初読の方へ。あまり情報を入れずに読むのがオススメ。
あらすじ(引用)※個人的にはあらすじも読まずに本作を手に取った方が面白いと思うので、白字にしています
死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。だがその魔手は彼女へと迫りーー。ミステリランキング5冠、最驚かつ最叫の傑作!
城塚翡翠。
彼女は、なにを視(み)ていたのだろう……?すべてが、伏線。
わはは。うーんなるほど、よく出来た構成というかなんというか。
正直not for meな作品ではあったんだけど、感心してしまったので星4です。これは確かに好き嫌い分かれるかも。
このブログまで辿り着いてる人は多分前評判既に知ってるとは思うけど、できたらあらすじ・アオリ一切何も知らずに読んだ方が、いい読書体験にはなると思う。
もう文庫落ちしているので比較的安いし、読みやすい文体の上、何せミステリランキング5冠なので、自分のように読んでみて好きじゃなかったとしてもなんらか糧にはなるだろう。できればミステリ初心者の方が楽しめると思う。
※以下ネタバレあり感想
「全てが伏線」の煽り文句が本当に良くない。笑
ただ、この煽りがなかったら正直読まなかったと思うので、これを読者にさらしてもなお驚ける展開を作らないといけないからミステリって難しいね。
香月が連続殺人の犯人っていうのは正直かなり序盤の方で見当がついてしまった。
あと翡翠に霊能力がないっていうのは、タイトルも香月ではなくて「霊媒探偵城塚翡翠」なので、むしろ読み初めの頃はそういう展開なんだろうなと思ってたけど、ゴリ押し推理を続けるから「こういう特殊設定ミステリのつもりなのか...?」って一周回って騙されちゃったよ。
※回りくどい設定の名探偵については、麻耶雄嵩の貴族探偵や木更津悠也シリーズで慣れてしまっていたので、まあそういう特殊設定もありうるかなと思ってしまっていたのも良くない。笑
香月がシリアルサイコキラーだというのは、特に第3話での藁科との面会で「先生も同じだと思ったから」というところが一番分かりやすいヒントになっていて、作者的にはここで香月に視線誘導することで翡翠が探偵であることを目眩し(ミスディレクション)させてるということなんだろうね。
本書は何といっても最終章が最大の見せ場で、香月の正体が明かされると共に、翡翠には実は霊能力などなく全て推理により導いていたという大ドンデン返しが明かされる。
のだけど、このドンデン返しが、こう、なんというか、ほほーん、という以上のものがなくてですね。
倒叙といえば倒叙なんだけど、犯人もトリックも(トリックというほどのトリックはないんだけど)明かされた後で、こんな推理もできるのです!を見せられてもあんまり驚きがないよね。細かい伏線はすごいけど。
こういう「解き直し」をやるなら、裏の真相まで欲しかった。例えば、全てを裏で操っていたのは翡翠だったとか、一つだけ犯人が違っていて翡翠が庇っていたのだったとか、誰も死んでいなかったとか。
香月が犯人なのも火の玉ストレートすぎるので、そっちをもう一捻りしても良かった。香月が2人いたとか、描写されてない3人目がいたとか。
ただこれは色んなミステリを読んできてしまった故の、ドーパミンジャンキーの戯言ではある。
ちなみに、香月史郎=殺人鬼・鶴岡文樹のヒントとして、「つるおかふみき」を入れ替えて「かおるつきふみ」に男を示す「郎」をつけて「香月史郎」、変則アナグラムだったというのが示されるんだけど、推理できるかい!!笑
アナグラムは色んなミステリで出てくるからすぐ疑われるしバレがちだけど、だからといってここまで変則的にしておいて「ヒントでした」はちょっとなぁ。最終章の翡翠の推理は一事が万事こんな感じなんで、解けるかい!になった。笑
色々言ったけど、最終章で豹変する翡翠自体は面白かった。
「よろしいんですか? わたしが説明してしてしまって? 考えることを放棄しちゃいます? このままページを進めてしまっても?」
煽りよる煽りよる笑笑
ここらへんめっちゃメタっぽくて割と好き。1〜3章の翡翠の描写がまじでラノベヒロインなので大分イラっとするキャラなんだけど、最終章でこれやりたくて作者も抑えて描いてるわけよね。
あとエピローグも良かったな。
美少女探偵翡翠ちゃんがボッチなわけないでしょうとか息巻いてたけど、実際には本当に(演技ではなく)友達がいなくて、香月との遊園地も楽しかったし半券は「最近」捨てられたーー
完璧美少女名探偵翡翠ちゃんが、シリアルキラーで霊媒を心から信じていた香月に少し心揺れ動かされていた、というオチが憐憫を誘うというかビターな感じでいいですね。もう香月は再登場しないだろうことも含めて。
not for meではあったけど、文章自体は読みやすかったので続きも買うかも。でももうこの飛び道具使えないから微妙なんかね。
