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日々雑感(ミステリ感想中心)

十角館の殺人<新装改訂版> (綾辻行人/講談社文庫)

17.十角館の殺人<新装改訂版> (綾辻行人講談社文庫)

総評:★★★☆☆

オススメ:国内ミステリを読むなら避けて通れない金字塔的一作。

ネタバレされる前に読みましょう。

 

あらすじ(引用)

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!

1987年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。(講談社文庫)

 

新本格を読むなら避けては通れないということで、ずっと気になっていた作品。やっと読んだ。だが、やっぱりというか、うーん...個人的にはアンフェア感が強くて肩透かしだった。

ただ、これが綾辻行人のデビュー作であり、これをきっかけに新本格ブームが巻き起こることを考えると偉大な一作だなぁとも思うわけで、評価が難しい。個人的な好みでいうと☆2だが、最早古典に当たる名著ということを評価に入れると☆4なので、あいだをとって☆3という感じ。

あと、87年に刊行されたことを考えると、某トリックが使われてるのって目新しいんだろうけど、今読んでみると衝撃には欠けてしまう。ミステリの難しいところは、トリックが先駆けたもの勝ちという点だろう。いや、実際に先駆けたのは十角館なんだけど。

先述した通り、本書は本格ミステリの古典といっても過言ではないので、後の系譜を理解したり教養として読むならば避けて通れない作品ではある。ミステリ読みなら(面白いと思うかは別として)必読書だろう。

また、ミステリ好きを狙い撃ちする騙しも散見するので、少なくとも『そして誰もいなくなった』読了後に本書に取り掛かることをお勧めする。

 

十角館の殺人(講談社文庫)│綾辻行人│Amazon

 

 

※ 以下、ネタバレ感想

 

 

 

 

 

 

 

 

叙述トリックの定番と聞いて、いつかは通らなきゃいけないなぁと思っていた。この前の『ハサミ男』同様、随所でネタバレされやすい作品でもあるので自衛のためでもあるが。

でも正直、例の1行は「え?!」となったものの、インパクトには欠けたかな...うーん。

変なアダ名は確かにミスリードくさいなと思いつつ検討してなかったので、守須は当然モーリスだと思ってたよ。江南=コナン、だったし。多分このアダ名ミスリード名探偵コナン読んでた世代は直撃でぶっ刺さるんじゃないかな...(毛利蘭はモーリスルブランから取ってるし)

なので、「守須=ヴァン・ダイン」が判明した時はびっくりしたものの、「そういえばこのあだ名って襲名制だっけ??一世代前のヴァンが殺されて、この人は今世代かな?伏線あったっけ?」とか深く考えすぎて、新聞記事で「6名死亡」が明言されるまで正直意味が分かってなかった。守須による長々としたトリック解説を読みながらも、「えっ真犯人他にいるよね?もう一度どんでん返すよね?」とか変な意味で狼狽していたり。

うーん、要するに叙述トリックに慣れすぎてしまって、謎解きのあっさり感が受け付けなかったんだよね。

あと一番アンフェアだと思ったのは、『そして誰もいなくなった』をなぞるような「孤島モノ」と思わせておいて、犯人は本土と島を行き来してたことかな。反則じゃん?確かに行き来できないとは言ってないけど、それなら外部犯でも構わなくなるわけで。

それと、叙述モノならもうちょっと「守須=ヴァン」を示唆する伏線があってもいい気がする。小説に提示された条件だけでは必要十分とは言い難い。癖なり外見の描写なりで違和感を与えていたら、評価も上がったと思う。

あとは、毒殺多すぎ。殺すのに殆どトリックがない。左手を切った理由はあったものの、殺人方法はこの犯人以外にもできたように思うので、欲を言えばもう一捻り欲しかった。

 

因みに感想サイトを見てておぉって思ったのは、『そして誰もいなくなった』を読んでいると「犯人は被害者の中にいるのではないかと疑ってしまうこと」。まさにその通りで、偽装殺人トリックだと思っていた。裏の裏をかいて普通にラスト残った二人が探偵と犯人だったわけだけど。そこはちょっと悔しいなぁ。

ミステリ読みだとニックネーム及び偽装殺人に引っかかるようにしてるのは、作者らしいイタズラである。

 

どんどん橋の時も思ったが、何と無く綾辻行人は自分に合わないだけな気もしてきた。文体は軽いノリで読みやすいのだが、どうにもカタルシスを感じないというか、騙された気持ち良さがない。よく言えばお上品で古典ミステリを踏襲しているのだが、悪く言えば古臭くて盛り上がりに欠けるといったところ。

 

もしかすると館シリーズをもうちょい読むかもだが、基本的には作者追いはしないと思う。