55.ダンガンロンパ霧切 2(北山 猛邦/星海社)
総評:★★★☆☆
オススメ:盛り上がってきた第2巻。ダンガンロンパシリーズが好きな方へ。
あらすじ(引用)
謎の組織、「犯罪被害者救済委員会」の次なる“黒の挑戦”は「探偵オークション」!廃墟と化したホテルを舞台に繰り広げられる死亡遊戯の行方はー!?原作ゲーム『ダンガンロンパ』シリーズのシナリオライター・小高和剛からの直々の指名を受け、「物理の北山」こと本格ミステリーの旗手・北山猛邦が描く超高校級の、霧切響子の過去ー。
<参考リンク>
ダンガンロンパ霧切 1(北山 猛邦/星海社) - 好きなものだけ食べて生きる
星4寄りの3という感じ...だったかな...うーん。
アリスミラー城の時も思ったが、北山先生、風呂敷を畳むのがもしかして苦手なのか...?
なんというか、冒頭〜中盤までは非常に良い。
13億もかけられて準備されたトリック。探偵オークション。密室殺人。沈黙する探偵。いやぁ、文句なく星5ですよ。
どうなってしまうんだろうというハラハラ感でページを繰る手が止まらなかった。
が...
やっぱり、真相と最後の引きがなぁ。個人的にはちょっと惜しかった。なんかこのヒキはちょっと怪盗クイーンとかを思い出しちゃったね(詳細はネタバレありにて)
ハチャメチャ設定のミステリは全然好きだけど、こういう描写入れちゃうと好き嫌い分かれるんじゃないかな...という。まぁでもダンガンロンパだしな…(良い意味でも悪い意味でも)
やや辛口な感想になってしまったが、大風呂敷広げてしまってどうするんだろうというのと、なんだかんだ結ちゃんの今後が気になるので、最終巻まで一気買いした。笑 でも3~7巻はまとめての記事にするかなぁ。
※以下ネタバレあり感想
真相が見えてきたあたりからだんだん盛り下がっていってしまうのが、本当にもったいなかったかな…いや、そこに至るまでが非常に魅力的だったので、読者的にはあっと驚く展開を期待しすぎていたのかもしれないが。
以下箇条書きで感想を列挙。
・実は探偵だったメイドがいきなり死亡!
:まじで?!いきなり見せしめでここ殺す?!!え~~~でもダンガンロンパだし実は生きていましたとかあるんじゃないのか…??
・「探偵権」を競り合う「探偵オークション」!
:ライアーゲームじゃん!!面白くなってきた!というか、「探偵役」を競り合うということは七村が必ずしも絶対的な探偵じゃないってこと?七村も疑った方がいい?
・一夜目に茶下死亡
:そこから殺すの?!ていうか、第一発見者七村だし、なんか状況が状況すぎて七村怪しすぎないか?そしてまた密室なんですね…(わくわく)
・2回目の探偵オークションは水無瀬が競り落とす
:水無瀬なの?!え、なぜ水無瀬…水無瀬死ぬのかな…どういうことだ…
・二夜目は鳥尾屋死亡
:殺す順が分からん~~~、本当に無差別なのか…?というか、よく考えたらワイダニットを考えるミステリじゃなかったわ…それにしても鳥尾屋なのか…うーん
・七村「犯人は最初から分かっている」「動けない理由がある」
:やっぱり七村怪しいじゃん!!!どういうことなんだ…
というか、霧切さんが活躍することを考えると、七村は途中で死ぬか犯人になるしかないんだよな…死ぬのかな…(わくわくわく)
~~(自分内)盛り上がりはここまでが最高潮~~
・オークションで、水無瀬を破って結ちゃんが探偵役落札
:所持金以上の額で落札してきた水無瀬。…いや、これ、被害者のお金では?読み返したらその話出てきてないし…水無瀬犯人?いやでも、ちょっと短絡的すぎか。
というか、水無瀬を挑発して5200万で落札させるって読みが甘いような。もし被害者のお金を奪っていたのなら、5200万で落とすっていう確証はないわけだし…
・霧切さんによる一夜目、二夜目のトリック解説
:う、う~ん…う~ん…???いや、正直微妙な気が…一番のポイントなので、この辺のもやもやについては改めて。
・犯人は夜鶴でした。
:そうですか…(あんまり意外な犯人ではなかったな…)
・七村「私はゲイだからね」
:突然のカミングアウト(この下り、いる?)
・最後の探偵オークション、何故か100万を持っている霧切さん
:まぁ…あとあるのはメイドちゃんのお金ですかねぇ…と思っていたのであんまりサプライズにはならなかったです。最後までライアーゲームっぽかった。笑
・新仙帝は元・トリプルゼロだった!!
:えぇ…
・七村、霧切さんと結ちゃんに発砲!!
:あ、はい…
・美舟ちゃん最後の超能力発揮
:ここは熱かった!ダンガンロンパっぽいというか、こういう展開は好き!美舟ちゃん、このためだけのキャラか?そのあと普通に死んじゃうのが惜しいね。
・新仙帝だけでなく、残りのトリプルゼロも犯罪被害者救済委員会側の人間だったのだ!!七村「もう堕天は始まっていたのか…」
:えぇ…(2回目)
・新仙帝、ノーマンズ・ホテルを消して見せる
:何でもありやーん…いや、こういうの、怪盗クイーンとかでもたまにあった「強キャラ感を高めるためだけに見せる何でもありのマジック的なイリュージョン」だと思うんだけど、正直作品全体がチャチく見えてしまうので(あとキャラクターのインフレが始まるので)やってほしくなかった…
あ、でもこのトリックについて、次の巻できちんと論理的な説明してくれたら掌返しで評価します。笑
という感じで、中盤から突っ込みのオンパレードでちょっとがっくりきてしまった。うーん……本当に途中まではすごくよかったんだけど…
また、今回の密室トリックについてだが、かなり無理のある内容だったので、個人的にはいまいちな切れ味だった。
①人が通ったと思ったのは、単に扉にストッパーを噛ませることで自動で閉めただけ
…いや、厳しくないか?
②犯人は屋上からぶら下がっていた
いわゆる「隠し通路があった」に近いのでちょっとアンフェアなような…。
屋上を最初から提示してくれていたり、もっとうまく伏線を張っていてほしかった。今まで使っていなかった「自動車」がここで出てきたのはなるほど!と思ったけど。
③一億円を踏み台にして、窓へおびき寄せてロープで殺した
いやいやいやいや。「窓へおびき寄せてロープで絞殺」の難易度高すぎでしょう。怪しすぎるやん。そもそも夜時間だぞ。探偵役以外の奴が窓から声かけてきたら、普通は大声出してみんなを呼びに行くだろ…
ていうか、水無瀬が探偵で役に立たなかった二夜目はともかく、一夜目にこれやるの、時間的にもめちゃくちゃ厳しいでしょ…いくらなんでも無理がある…。
強いて言えば、「一億円を踏み台にした」「第一発見者はトリックに気付くが、自分の懐に金をしまってしまうので、自動的にトリックが隠蔽される」「七村は金に目がくらんだ」という流れは面白かった。面白かったけどさぁ…
これ、七村が金に意地汚い探偵だったからうまくいったけど、やっぱり一夜目に違う人が探偵やってたらうまくいかないのでは?
そもそも、七村のパーソナリティが割と破綻していると思う。霧切さんによれば、
・七村は最初にオークションのルールを聞いた時点で、勝ち方も犯人の狙いも理解したのではないか
・ひそかに犯人の計画に乗ることにした
・お金と時間はイコール。探偵としての職務よりもお金を優先した
ということだけど、じゃあ何故一夜目に1億円全部使って探偵権を落札したのだろうか。
探偵権を落札すれば、その夜の被害者が持っているお金が手に入るのはいいが、その被害者が持っている金額は最大1億円、オークションでお金を使ってしまっていればそこからさらに所持金が減る。つまり、1億円投資して、リターンは1億円以下になるはず。
(そもそも、ルールを聞いただけで勝ち方に気付くというのはかなり無茶があるけど、「第1発見者は被害者の金を奪うことができる」という裏ルールまで気づいていたとしても)初日に全額入れるのは、ゲームとしてあまりうまいやり方ではないはず。
どちらかというと、水無瀬の行動の方が正しいんだよね。探偵権を一回落札して、その夜は被害者の金を奪って充填し、翌夜もその金を使って探偵権を確保する、という「自分の命を守るためだけに、落札ループする」という行動なら理解できる。
あと、やっぱり「探偵としての職務よりもお金を優先した」というのがなんか…じゃあ七村は何がしたいんですかね……まどろっこしいことが嫌で(=時間を短縮するために)謎を最短で解く探偵なんだと思ってたんだけど…事件の解決よりも金を優先してしまうと、七村という人物がよく分かんなくなってしまいますが…
「「実は」金にがめつい探偵」という設定にしたいなら、ほかにもなんかやりようがあったんじゃないかなぁ。惜しい。
色々突っ込んだけど、最低限七村のキャラ立てを解決してくれれば、ここまで違和感なかったかも。
あと、この事件はゲームで見たかったなぁ。