クリムゾンの迷宮 (貴志 祐介/角川ホラー文庫)
番外編3.クリムゾンの迷宮 (貴志 祐介/角川ホラー文庫)
総評:★★★★★
オススメ:サバイバルゲームモノが読みたくなったらこれ。ドキドキハラハラとぞわぞわする恐怖が心地よいSFホラー。
あらすじ(引用)
藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な着想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。
面白かったけどミステリじゃないね。ジャンルを間違えた笑 でもせっかくだから紹介したいので番外編扱い。サバイバルゲーム系のミステリを読みたくて選んだ作品。
一部、謎の提示はあるし、『インシテミル』的な殺し合いゲームとも取れるけど、まぁサバイバルに重点が置かれてるので『バトル・ロワイヤル』と同じノリなんじゃないかと。
とりあえず、最高に面白かったしスリリングなエンタメ小説だったのでオススメ作品ではある。読み返したいかというと、うーん...となってしまうが。作中でも指摘されているがゲームブックって感じ。あと、中盤からガンガン面白くなっていくのだが、あの結末はちょっとあっさりすぎたかも。このへんは好みの問題なのでケチをつけるほどではないけど。
繰り返しになるが、ミステリではないのでネタバレ感想も簡単なメモに留めておく。
- 作者: 貴志祐介
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 1999/04/09
- メディア: 文庫
- 購入: 31人 クリック: 726回
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※ 以下、ネタバレ感想
やっぱり、グールの登場がめちゃくちゃ怖くてよかったな〜 結局一番怖いのは人間っていう。
あと散々いろんな人も言ってるけど、湯水のようなサバイバル知識が面白かった。最初はミステリだと思って読んでいたので、この膨大な知識も伏線になってるんだろうな...とか思ってたけど、そうでもなかった。単に面白いだけというか。蛇と食料のドクロマークくらいかな?
視点人物の藤木にだけ焦点を絞ってるのも読みやすくて良かった。この手のサバイバルゲーム系の話は、どうしても個性的なキャラクターそれぞれの過去やストーリーも付け加えていきたくなるのに殆ど無かったから、かえってリアルだった。
グールになってしまった楢本・鶴見の過去とか一切触れられないし、そもそも再会した時には既に豹変後なので何があったかは間接的にしか分からないのがより恐怖感を高める。上手いな〜
というか、殆どキャラそれぞれの描写がないのに妙にキャラが立ってるんだよね。東西南北に分かれた段階で、それぞれ確かにその選択肢を選びそうだなぁと思わせる感じ。
誰も手を挙げない東ルートにしょうがなく組み入る教師の加藤さんとか、抜け目なく食料ルートに入った安倍とか(しかもあっさり食料にされてしまうのも納得してしまうというか)、明らかに「体力バカ」っぽい船岡が護身用武器を取りに行くとか。船岡は初っ端から死亡フラグ立ってたけど本当陰惨な感じで可哀想だったね...いや全員結構酷いバッドエンドだったか...
まぁ、しかし読み終わってから考えると東西南北の分岐でほぼ勝者が確定する運ゲーなのは何となく理不尽かもね。特に護身用武器を取りに行ったグループって結局グールに対抗できなかったわけで、意味が殆ど無かったんじゃないかと。北へ行ったグループが情報を全部話しちゃってたらゲーム主催者はどうしたんだろうなぁ。藍が藤木を引き止めなかったら喋っちゃってたと思うんだけど(あ、だから止めたのか...)
最善ルートとしては、北グループが情報を全て話すことで、隠匿したアイテムも出させて配分した上で食べ物は自力調達できるからドクロマークは触れないようにして(グール回避)皆んなで生き延びよう!みたいな展開だったのかなぁ。『ライアーゲーム』のナオじゃなきゃ無理だね笑
普通にゲームとしても成立しそうなストーリーでとても良かった。
あ、でも一点、「実はスナッフピクチャーのための企画でした」ってオチは正直「だろうね」としか思わなかったので終盤まで引っ張る必要なかったんじゃないかと。大概の殺人ゲームものはそういう設定だもんなぁ。