61.子どもの王様(殊能 将之/講談社)
総評:★★☆☆☆
オススメ:ジュブナイル小説が読みたい方へ。ミステリ要素は控えめです。
あらすじ(引用)
団地に住むショウタと親友トモヤ。部屋に籠もって本ばかり読んでいるトモヤの奇妙なつくり話が、ショウタの目の前で現実のものとなる。残酷な“子どもの王様”が現れたのだ。怯える親友を守るため、ショウタがとった行動とは?つくり話の真相とは?『ハサミ男』の殊能将之が遺した傑作をついに文庫化!
うーん...
まぁ端的にいうと、殊能将之にしては小粒で残念な感じだった。まぁ奥付見たらミステリーランド用の書き下ろしだったので多少は致し方ないか。とはいえ、ミステリーランドはどれも児童向けといってバカにできない本格作品が多かった気がするので…期待していたんだけどなぁ…。
あと、視点人物が小学生なので小学校の描写がやたら冗長で、その割に謎には大きく関わらないので、その辺ももったいないような...
殊能将之は、ハサミ男、鏡の中は日曜日、美濃牛とかなり重めの傑作を読んでしまったので、期待度が高すぎたのも一因かもしれないが、まぁこれは凡作だったかな。
恐怖感を煽る演出、ビターな結末はミステリーランドで偶然これを選んでしまった子供にとっては多少トラウマになるかもしれない。(でもそれも麻耶の神様ゲームに比べたらインパクト薄いしなぁ...)
取り立てて書くこともあまりないので、今回はネタバレ感想も短めかつ辛めのコメントになります。
※以下ネタバレあり感想
「子どもの王様」=トモヤのお父さん、なのはまぁ薄々想像がついてしまったので、そのままストレートで肩透かし。
ショウタが「子どもの王様」を殺してしまうのはなかなか衝撃だけど、でもまぁ、それだけ。
あと以下のくだりで「意外な人物が犯人?」と思ったけど、そういう種明かしはなかったよね。自分の読み落としだったら恥ずかしいんだけど...
そして、ショウタもまた、驚いていた。初めて間近で顔を見て、ショウタは子どもの王様の正体を知ったのだ。思わず、頭のなかが真っ白になった。
ストレートに、トモヤと面影の似ているトモヤ父が犯人だったのでびっくりしたという表現なのかな。
深読みして、トモヤのお父さんが実は作中の他の人物も兼ねていたり?と思ったけど、候補がいない...コウダさんの話が無意味に挟まったりしたので、コウダ息子=トモヤ父かなとかも考えたけど、まぁ違いそう。
うーん、謎(誰か深読みできる人がいればこっそり教えてください…)。
それと、トモヤとショウタの仲の良さをもうちょっときちんと描いてほしかった。
そうしたら、最後のお別れももうちょっと悲しくなった気がするんだけど...
そもそもショウタが他の友達とばっか仲良くしてるので、トモヤの家を見張ってあげたりあんなに行動を起こすのがあんまり理解できない。
トモヤの作り話も、もうちょい意味のあるものだったら良かったのにな。結局ただの雰囲気づくりで終わってしまった...
殊能将之といえば、緻密な伏線と人間描写だと思っていたので、どっちもあまり感じられず残念。せめてショウタくんにもうちょい感情移入したかったなぁ。
殊能将之は、あと「キマイラの城」、壁本と噂の「黒い仏」を残すばかりなのだけど、さてどっちから読もうかな。残り二作で美濃牛を超えてくれるだろうか。