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日々雑感(ミステリ感想中心)

七回死んだ男 (西澤 保彦/講談社文庫)

37.七回死んだ男 (西澤 保彦/講談社文庫)

総評:★★★★★

オススメ:西澤保彦出世作。西澤入門に最適でしょう。

 

 あらすじ(引用)

どうしても殺人が防げない!?不思議な時間の「反復落し穴」で、甦る度に、また殺されてしまう。渕上零治郎老人ー。「落し穴」を唯一人認識できる孫の久太郎少年は、祖父を救うためにあらゆる手を尽くす。孤軍奮闘の末、少年探偵が思いついた解決策とは。

 

いや、もう文句なしに面白かった。

西澤保彦は一時期凝っていたはずなのになんでこれ読んでなかったんだろう。ダントツの有名作品なだけあって、隙のない綺麗な構成だった。

西澤保彦作品はどこか悪意のあるオチだったりコミカルに見えて後味の悪さが残るものが多いイメージだが、今作はそういったこともなく入門書として勧めやすい。

また、西澤保彦の代名詞でもあるSF要素とパズラー的なロジックはふんだんに残しながらも、「同じ日を9回繰り返す」という単純明快なルールと読者の盲点をついた分かりやすいタネのおかげで、SFミステリに慣れていない読者でも楽しめるのではないか。

 

と、まぁケチのつけどころのない作品なのだが、個人的にはやっぱりえげつなさが物足りなくてほんのちょっとだけ残念だった。綺麗なオチすぎて。うーん。

★5をつけるに足りる作品なんだけど、★4をつけた聯愁殺みたいな作品の方が個人的には好みなんだよね。(以前のレビュー:聯愁殺 (西澤保彦/中公文庫)

でもまぁ、登場人物たちのやりとりが面白かったからいいかな。姉妹喧嘩がなかなか酷かったです笑  西澤保彦の描くキャラはどこか憎めない感じが良いよね。

あとセリフ回しが凄く独特で、話し言葉っぽい言い回しになっているのもとても良い。映像化したら映えそうなのになぁ。トレーナーにちゃんちゃんこの衣装が愉快だと思うんだけど。

 

最高傑作と言っても差し支えない良作品だが、逆に言うとそれ以上自分から何ともケチをつけようがないので、ネタバレ感想は差し控えることにする。一気読みしたくなる作品。

 

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)