好きなものだけ食べて生きる

日々雑感(ミステリ感想中心)

仮面山荘殺人事件 (東野圭吾/講談社文庫)

30.仮面山荘殺人事件 (東野圭吾講談社文庫)

総評:★★★★★

オススメ:一風変わったクローズドミステリを読みたいあなたへ。類を見ないトリックに圧倒されるでしょう。

 

※今回の本はあらすじを読まない方がより面白いかと思います

完全なネタバレにはなりませんが、一応白字で隠しておきますので気になる方だけどうぞ。絶対に読んで損しない作品なので、「クローズドサークル」「どんでん返し」で興味を惹かれた方はどうぞそのままお買い求めください。

 

 

あらすじ(引用)

八人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた八人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに一人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではありえなかった。七人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった…。

 

 
うーん、なんだろう、面白かったです。優等生。

東野圭吾屈指の名作と名高い作品だったので選んだんだけど、一気読みしたくらい読ませるミステリだった。

直近で読んだ、同じ山荘ものの『ある閉ざされた雪の山荘で』より面白いというか、よりブラッシュアップされた作品かと。先に『雪の山荘』読んでからのがいいかも。あれはあれでまぁまぁ良作なんで、がっかりしちゃったら惜しいし。ある種似たような話というか、『仮面山荘』が上位互換って感じ。

...ただ、その、あまりに綺麗なんで感想書きにくい。

読んで、としか言いようがない。間違いなく面白いし、トリックの使い方も綺麗。いわゆる、山荘ものだと思って読み始めると中盤あたりでひっくり返されるし、意外性もある(ていうか、だからこそあらすじ読まない方が面白い)。

登場人物が多い割には書き分けもされてるので苦にはならないし。最後の最後でタイトルの意味が分かる仕掛けも優等生。うん、読んでください。

満点つけて手放しで褒めておきながらアレなんだけど、今回のネタバレ感想は短めです。 とにかく読め。

 

仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)

仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)

 

 

 

 

※ 以下、ネタバレ感想

 

 

 

 

 

 

読めばもうストレートに面白かったー!って感じのミステリだよね。東野圭吾は一般ウケするミステリだけじゃなくて、こういうミステリマニアも唸らせる作品も書いちゃうから、ほんと嫌味かよ(褒めてる)。

本作で面白いのは、やっぱりトリッキーな構成と叙述トリックかな。

ネタバレなしの方で、「あらすじ読まない方がいい」って書いたけど、まさかクローズドサークルに強盗がやってくると思わなくない??!いや、私はあらすじ読まない派だからほんとびっくりした。ていうか、公式あらすじにもそのこと書かない方が良いと思うんだ。

まぁ、だから正確には「クローズド」じゃないけど。準クローズドでいいでしょ。

そんでもう一個は、主人公・高之が実は朋美の事件に関わっていたこと。

朋美を殺すために薬の取り換えをしていたのだが、主人公はそれを朋美が本当に飲んだせいで死んだのか、それとも事故なのか分からない。だから「朋美の死は事故だったのか、事件だったのか」と高之が心内文で叙述するのは間違いではないが、読者としては「高之は婚約者・朋美を殺した犯人を捜している」と受け取ってしまうミスリードになっている。

で、これだけじゃないのが東野圭吾。もう一ひねりして、「そもそも今回の事件自体が、高之をあぶりだすための大掛かりな芝居であって、全て演じられたものだった」というのが大オチ。うーん。どんな頭してたらこんな話思い浮かぶんだよ。

因みにこの叙述トリックは、西澤保彦某作品(クリックで以前書いたレビューに飛びます)と同じタイプだよね。でも使い方が全然違うからどっちも好き。

あと、『ある閉ざされた雪の山荘で』のネタバレになるんだけど(以下反転でトリックについての言及)、『ある閉ざされた~』も「①実は外部と接触することが可能な「準クローズド」な状況」で、「②実は誰も死んでいない、全てはある一人を騙すための芝居であった」というオチが良く似ている。

でも、『ある閉ざされた~』では、「なんだよ単なる芝居かーい、しかも動機に無理があるだろ」というガックリ感があるのに対して、『仮面山荘』の方はそれを上手く克服・アレンジしてきてるんだよね。上位互換っていったのはそのためです。

それにしても、『ある閉ざされた~』のすぐあとに『仮面山荘』読んだのに、トリック全く気付かなかったのは悔しい。同一作者が似たようなトリック使うと思わなかったんだよね。くそ、心理トリックか(?)

 

いや、ほんとこの作品は綺麗にまとまりすぎててどんな感想書いても蛇足になっちゃうんだよなぁ。文句の付けどころがないです。