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密室殺人ゲーム2.0 (歌野晶午/講談社文庫)

5.密室殺人ゲーム2.0 (歌野晶午講談社文庫)

総評:★★★★★

おすすめ:『密室殺人ゲーム王手飛車取り』を楽しめたあなたへ

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』の続編なので、必ずそちらから読むこと。

 あらすじ(引用)

あの殺人ゲームが帰ってきた! ネット上で繰り広げられる奇妙な推理合戦。その凝りに凝った殺人トリックは全て、五人のゲーマーによって実際に行われたものだった。トリック重視の殺人、被害者なんて誰でもいい。名探偵でありながら殺人鬼でもある五人を襲う、驚愕の結末とは。<本格ミステリ大賞受賞作>

 

面白かったー!!!

いや、王手飛車取りも怪作だったけど、負けず劣らず本作も良い出来だった。しかも第1作を読んでいるからこそのミスリードも勿論あって、読者は当然疑いながら読んでいるからハードルが上がっているのに十分楽しめた。

また、今作第3章は、「現場にいる警官の地道な捜査によって犯人の脱出経路はバレてしまう」「犯人だからこそ提供できるヒントによって推理ゲームが成り立つ」という特殊な条件の下成立しており、この作品の独自性を感じる。

先に言っておくと、続く第3作『密室殺人ゲームマニアックス』は外伝という位置付けであり、正直第1作第2作に比較するとかなり見劣りがする。忙しい人は今作『2.0』までで十分ではないか。

3部作らしいので早く続きが読みたいが、いつになることやら... 

 

密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)

密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)

 

 

 

※ 以下、ネタバレ感想(王手飛車取りのネタバレも含む)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王手飛車取りラストでチャットメンバー達が頭狂人の仕掛けた爆弾ゲームに巻き込まれ、全員死亡?!というクリフハンガーにしたところで、今作品だったので5人が以前同様和やかにチャットを続けていることがまず違和感。

第1話で、殺人ゲームに興じている集団が他にもいることが判明し、この時点でもしかしてこの5人は2代目チャットメンバーかな?と想像がつく。

因みに、1作目と今作で構成も被らせてきているところが非常に凝っていて、章タイトルも踏襲している上、各人のキャラクターも1代目と重なる部分異なる部分が書き分けられており非常に秀逸なので、比較をしつつ各章の簡単な感想をつける。

 

Q1次は誰を殺しますか?...被害者のミッシングリンク当て

→Q1次は誰が殺しますか?...被害者がどのように設定されているか、殺人ゲームのルール当て

前作ではただのクイズだったミッシングリンクが、今回はより面白く演出されている。また、殺人ゲームが一般に広まっていることが今作品の世界観を表してもいる。

 

Q2推理ゲームの夜は更けて...伴道全教授によるクイズ

→Q2密室などない...伴道全教授によるクイズ

前作同様閑話休題的なクイズゲーム。没ネタ集かな?という感じ笑

 

Q3生首に聞いてみる?...ザンギャ君による、死体を利用したトリック、章タイトルがヒント

→Q3切り裂きジャック三十分の孤独...ザンギャ君による、死体を利用したトリック、章タイトルがヒント

ザンギャ君の事件は死体を使った突拍子も無いトリックが多くてTHEミステリー!という感じで好き。

1代目ザンギャ君と今回のザンギャ君で外見が違うことが明らかになるので、ここで2代目によるチャットであることが確定。1代目同様、2代目ザンギャ君も名前通り残虐な手口が特徴的で描写が上手い。死体の中に隠れていた切り裂きジャックは、さぞ孤独な三十分を過ごしたことだろう。

前述した通り、今作品が1番「犯人が語る形式だからこそ成り立つミステリー」であり、設定の妙が光っている。

 

Q4ホーチミン  ー浜名湖5000km

→(該当なし)

 

Q5求道者の密室...044APDによる、自身のキャラクター性を利用した大掛かりな密室トリック

→Q6密室よさらば...044APDによる、自身のキャラクター性を利用した大掛かりな密室トリック

実はこの事件だけはすぐに真相にたどり着けた。というのも某ゲーム(※1)にオチが似たような事件があったからだが...笑

他殺に見せかけた自殺というのはミステリ的にはややがっかりすることが多いが、最初から犯人が明らかであるこの作品においてはとても効果的に使われており、締めくくりにふさわしい。ただ、ラストの長々とした解説は完全に蛇足と感じた。

 

Q6究極の犯人当てはこのあとすぐ!

→(該当なし)

 

Q7密室でなく、アリバイでもなく...頭狂人によるフーダニット

→Q4相当な悪魔...頭狂人によるフーダニットがトリックの仕掛けに直結するアリバイ崩し

前作の頭狂人が実は女性!というオチだったので今作の頭狂人は男性だろうとたかを括っていたが、まさか被害者の恋人とは思わなかった。兄を殺害し自分の身元をトリックに使った初代頭狂人の行動をトレースするかのような、2代目頭狂人の叙述トリックは鮮やかとしか言いようがない。映像トリック自体はチープだが、その辺も初代と似ている。

 

Q?誰が彼女を殺しますか?/救えますか?

→(該当なし)

 

(2.0のQ5三つの閂も1作目に該当作品なし)

2代目aXeは初代と違って装置トリックがお好きなようで笑  トリック自体は面白いけど、装置トリックは爽快感がないんだよなぁ。

因みに2代目aXeが女性というのは全く気付かなかったのでザンギャ君同様驚かされた。

 

 

総評としては、前作よりも疑り深く読まされているのにすっかり騙されてしまい、トリックの質も高いと思った。

ただ初代メンバーがあっさり殺されてしまったのは惜しいところ。今作では伴道全教授のみ身元が明らかになっていないので、もしかすると初代と同一人物では?と考えたが、ネットの感想でも似たような意見を見かけた。伴道全教授だけ逃げ延びてるし、どこかで再登場してほしいものだ。

あと今作では伴道全教授が実際に手を汚してないのも気になっている。

 

ともかく第3作読みたいなぁ。初代メンバーの回想録でもいいから、このスタイルでもっとミステリー書いてほしいけどネタ作るの難しいんだろうか。

 

※1 某チュンソフト2012年発売の(反転で作品タイトルと該当事件)スーパーダンガンロンパ2の5章(ここまで)のこと。あの事件は、ゲーム好きというよりミステリマニアの間で評判が高いイメージ。